もっとも、こうしたスキャンダルは、そう大きなダメージになることはないだろう。というのも、田母神候補の場合、長年連れ添ってきた妻を捨てるといった行動と普段の主張にあまりギャップがないからだ。
軍事や歴史認識でのタカ派色ばかりが強調されている田母神氏だが、その言動をこまめにチェックすると、今時ありえないような「女性蔑視」「弱者切り捨て」を公言している。
有名なのが、2012年10月20日の沖縄暴行事件のツイッターだ。田母神氏はこのとき、〈沖縄女性暴行事件でテレビが連日米兵の危険性を訴えるが、この事件が起きたのは朝の4時だそうです。平成7年の女子高生暴行事件も朝の4時だったそうです。朝の4時ごろに街中をうろうろしている女性や女子高生は何をやっていたのでしょうか。でもテレビはこの時間については全く報道しないのです。〉と、夜中に歩いている女子はレイプされて当然、とでもいうような主張を展開した。
また、2014年10月24日には、妊娠した女性についてこんなツイートをしている。
〈妊娠で軽い業務しか出来なくなった女性を降格したとか言って裁判に訴えるような女性はどんな女性か。「貴女を愛してくれる男性はいますか」と聞きたい。〉
さらに、2010年9月26日に開催された「my日本・総決起大会」では、低所得者を切り捨てるようなこんな発言もしている。
「法律が会社経営の手足を縛るものばかり、最低賃金法。日本はそんなものがなくたって経営者がきちんと判断をしてきた。これを法律で義務づけては経営者の自由裁量が奪われ、経営がやりにくくなる。これでは国際競争に勝てるわけがない」
2012年9月19日のツイッターはもっと露骨だ。
〈弱者が権力を握ろうとしています。弱者救済が行き過ぎると社会はどんどん駄目になります。国を作ってきたのは時の権力者と金持ちです。言葉は悪いが貧乏人は御すそ分けに預かって生きてきたのです。「貧乏人は麦を食え」。これは池田総理が国会で言った言葉です。〉
国を作ってきたのは時の権力者と金持ち。貧乏人はその御すそ分けに預かってきただけ。聞いているだけで空恐ろしくなる発想だが、しかし、こういう人物が、先の都知事選では、61万票もの票を集めたのである。
おそらく、今回の不倫・離婚騒動を聞いても、一連の弱者切り捨て発言を聞いても、田母神支持者はきっとほとんど動揺しないだろう。むしろ「よくぞいった!」と大喝采をあげるかもしれない。そう。日本は多分、思っている以上に香ばしい国になっているのである。
(田部祥太)
最終更新:2014.12.05 12:26