その後は、やはり「まんこ」と言えず、供述調書に「女性器」と変換する刑事に、裁判で供述調書を読むのが自分ならば〈私らしい言葉にしてもらわなきゃ困る!!〉と「まんこ」に修正するよう求めるなど、果敢に闘ったろくでなし子氏。そして供述調書は〈前代未聞のまんこまみれ〉になったという。ちなみに、供述調書は自分が読むと思っていたろくでなし子氏だが、これは間違いで、裁判になった場合、検事がこの調書を読み上げることになるらしい。
このように、警察のマヌケさ、雑さを見事に描いているとはいえ、これくらいの内容でも怒って逮捕してしまうのが、日本の警察の実態である。そもそも、以前もお伝えしたように、ろくでなし子氏の作品は、決してわいせつ物ではない。ろくでなし子氏は、「まんこ」に対する世間のまなざし──いやらしい、下品、女性が口にすることではない──に疑問を感じ、まんこの所有者たる女性自身が親しめるよう、ポップで明るく楽しいイメージづくりを行ってきたのだ。また、北原氏の「ラブ・ピースクラブ」も、男性視点の“男が女に用いて楽しむ”アダルトグッズではなく、女性が性の主体となれるグッズを取り扱っている。ふたりとも、男性中心主義の社会のなかで隠蔽されてきた“女性の性”を、自らの方法で表現してきた。それをわいせつと呼ぶことは、「女性は性を語るな」と禁圧していることに等しい。
この、不当かつ女性の性表現を抑圧する逮捕を、断じて許してはいけない。
(田岡 尼)
最終更新:2014.12.04 12:01