それを表すエピソードとして本書に記されているのが、東日本大震災で全村避難となった福島県飯舘村のレポートを放送した日のこと。放送直前に担当ディレクターからVTRの説明を受け、コメントを打診された井ノ原は、珍しく声を荒げて「どうして、こんな大事なことをもっと早く打ち合わせに来ないのか」と咎めたという。それは単にコメントに困るという話ではなく、震災のニュースは出演者にとっても大事なテーマであり、担当したディレクターにとっても大切な取材相手だとわかっていたからこそ出た厳しさ。
本番の生放送では、きちんと自分の言葉でVTRにコメントした井ノ原。そして、他の仕事のために放送終了後には早々にスタジオをあとにしたが、件のディレクターに1枚のメモを残していった。そこに描かれていたのは、ディレクターの似顔絵。それを有働アナは、「気にするなと、気にしてないよ、などという微妙なフォローの言葉で返って相手に気を遣わせるのではなく、ただただ愛情だけを伝えてたのだ」と分析している。
出演者発表記者会見では、舞台の下にいた有働アナが「いつもの定位置に来ていただいていいでしょうか」と異例のお願いを井ノ原に呼びかけ、2人が並んで話すという場面があった。かと思えば、昨年も総合司会として紅白に出演し、セクシーなドレスで物議を醸した有働アナに対して、井ノ原が「今年もどんなドレスか楽しみ」とイジる一幕も。「優等生的な発言しかしないかというと、私の腹黒い発言にもつきあってくれる」という有働アナの井ノ原評を実感した場面だった。年末の国民行事ともいえる紅白で、“腹黒”な2人がどんなやりとりをみせてくれるのか、期待しながら放送を待ちたい。
(江崎理生)
最終更新:2015.01.19 04:01