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C.R.A.C.野間易通「ネット右翼の15年〜『自由』が民主主義を壊していく」第1回

もはや首相自体が「ネトウヨ」である──安倍“ヘイト”政権が誕生した日

「ついにネトウヨが政権を取るのか……」

 私は現場におらず、誰かのツイキャスでそのおぞましい光景を見ていただけだが、それでも暗澹たる気持ちになった。レイシストをしばき隊が活動を開始する約2か月前のことである。ネット右翼や「行動する保守」は、ネット上でも街頭でも向かうところ敵なしの状態で、最高に調子に乗っていた時期だった。

 安倍や安倍内閣の閣僚、あるいは地方議員まで含めた自民党の政治家たちの発言がネット右翼のそれと大差ないのは、彼らがネット右翼に媚びているからではない。ネット右翼の思想そのものが、彼らの政治信条にそのままダイレクトにフィードバックしている。保守とネトウヨの境界は、いま限りなく曖昧だ。

 私が第2次安倍内閣成立時からこれを「ネトウヨ内閣」と呼んできたのは、ネット右翼がこの15年ほどにわたって培ってきた思想をこの内閣が実に忠実に体現しているからだ。ネット右翼御用達のヘイト・デマまとめサイトの中でも最も悪質な「保守速報」を安倍自身がフェイスブックでシェアしてしまうことからも明らかなように、「首相それ自体がネトウヨ」という状態なのである。すなわちそれは、これを同時に「ヘイト内閣」とも呼べるということである。

 リベラルな人たちが、昨今のヘイトスピーチ問題や嫌韓・嫌中本の大流行について「社会に不満を持つかわいそうな人たちが自らを慰撫するための一過性の流行にすぎない」といった感想を持っていることがよくあるが、そうした見解は間違いだと、私は思う。

 地道にネットにデマを書き、歴史修正主義にもとづいて地方の役所に申し入れをし、排外主義にもとづいて議員にロビイングをまめに行い、少人数でも決してめげずにデモをつづける。こうしたことをおよそ15年にわたって地道に、マメに続けてきた成果が、第2次安倍内閣にはそのまま結実しているように見える。

 この政治的傾向は昨日今日始まった突発的な流行ではなく、かつての新左翼とは別の立場から戦後民主主義を否定し、終了させようとするはっきりとした意志に基づく、日本の思想潮流の大転換なのである。

 つまり彼らは厳密な意味では「保守」ではない。かつての新左翼と同様、日本という国家が依って立つ根本的な理念を転換させようとする極右革命勢力である。そして逆に言えば、「憲法を守れ」「人権を守れ」と、「守れ」ばかり言っているリベラルの側が、実質的には文字通りの「保守」なのだ。

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