三宅博衆議院議員(当時・日本維新の会、現・次世代の党)は、衆議院文部科学委員会(2014年6月4日)で名古屋大学の平和憲章をとりあげて問題とした。
「平和憲章というのを定めているんですよ、名古屋大学なんか。/ここは、/わが国は、軍国主義とファシズムによる侵略戦争への反省と、ヒロシマ・ナガサキの原爆被害をはじめとする悲惨な体験から、戦争と戦力を放棄し、平和のうちに生存する権利を確認して、日本国憲法を制定した。/わが国の大学は、過去の侵略戦争において、戦争を科学的な見地から批判し続けることができなかった。むしろ大学は、戦争を肯定する学問を生みだし、軍事技術の開発にも深くかかわり、さらに、多くの学生を戦場に送りだした。/と、極めて偏向したこういった憲章をつくっているんです。これは国立大学ですよ。こんなことをやっているんです。/これは許しがたい。これは事実ですよ。そういうふうな、反対に、学長の暴走というよりも、教授会と言いましたけれども、大学の暴走こそ我々は厳しい目でチェックしなくてはならないというふうに思うんです」(衆議院HPより)
日本国憲法に則って戦争を批判し平和を擁護する理念を掲げているだけで、国会で国会議員から「偏向」「許しがたい」と罵られるとは、この国がもはや法とは異なった原理に支配されつつあることを示している。
大学の軍事協力の問題に取り組んでいる池内了氏(まさに名古屋大学名誉教授である)はこの発言のあった文部科学委員会に参考人として参加しており、三宅議員の発言はまるで「ヘイトスピーチ」である、と批判している(青土社「現代思想」14年10月号)。
三宅の発言を受けて、ネット上では平和憲章廃止に向けた名古屋大学への抗議行動も呼びかけられている。
こうして国家と社会から挟み撃ちされながら、大学は「大学の自治」を捨てて国家の論理に屈従することが迫られているのが現状だ。その先にあるものは何か。
池内了氏は大学の科学技術研究の今後に、次のような危惧を述べている。
「大学の科学研究が危うくなっています。実利を優先する商業主義や、研究費をめぐる過度の競争を背景に、論文などの不正も頻発して信頼を失いかねない状況です。/そんななか、さらに深刻な問題として、軍学共同の動きが急加速してきました。昨年12月に閣議決定された防衛計画大綱では「大学や研究機関との連携の充実等により、防衛にも応用可能な民生技術(デュアルユース技術)の積極的な活用に努める」とされました。防衛省は研究機関や大学などと技術交流を進め、軍事技術を発掘するための「安全保障技術研究推進制度」という基金の創設に20億円を概算要求しています」(朝日新聞9月23日記事より)