自由民主党公式サイトより
地方創生の影に隠れて目立たないが、安倍政権のトンデモない雇用制度改革(雇用規制緩和)が着々と進んでいるのをご存知だろうか。“改革”といえば聞こえはいいが、その実体は「正社員のクビ切り自由化」という話なのだ。
現状で会社が正社員を解雇するには「整理解雇の4要件」を満たさなければならないことになっている。具体的には(1)人員整理の必要性、(2)解雇回避努力義務、(3)被解雇者選定の合理性、(4)解雇手続きの妥当──がチェックされ、経営者は勝手気ままに従業員をクビにできない。
ところが安倍政権は、この企業にとっては都合の悪い規制を“改革”して、「一定額の再就職支援金を支払えば解雇ができる」ようにしようというのだ。
もし、こんな法改正が実施されれば、社員はいつクビを切られるかと怯えながら働かなければならなくなる。一方、経営者にとってはカネさえ払えばいつでも後腐れなく人員整理ができ、年金や健康保険といった重荷からも解放される。企業優遇の最たるものだ。
実際にはまだそこまで露骨になっていないが、いわゆる規制緩和特区における解雇制限の緩和という形で、すでに実験が進みつつあるのである。
しかもこの「クビ切り自由化」はほんの氷山の一角に過ぎないのだ。
安倍政権の右傾化にばかり気を取られて国民はほとんど気づいていないが、アベノミクスの成長戦略の「要」に位置付けられるこの“改革”は、「サラリーマン奴隷化」政策と言っていいほどおぞましいものなのだ。
安倍晋三首相は2013年2月の施政方針演説で「世界でいちばん企業が活躍しやすい国を目指す」と宣言し、そのためには「聖域なき規制改革を進め……企業活動を妨げる障害を、一つひとつ解消していきます」と、ハッキリそう言っている。
“企業活動を妨げる障害”というのは、労働者の権利を守るために設けられたさまざまな“規制”だ。安倍政権はそれを目の敵にして徹底的に破壊しようとしている。
例えばそれは、正社員は簡単にクビにしてはいけないとか、労働時間は8時間を基本としてそれを超える場合は割り増し賃金を払わなければならないとか、労働力を必要とする企業は労働者を直接雇用しなければならないといった労働における“大原則”だ。
いずれも長い歴史の中で定着してきた考え方だが、安倍政権はそれを“障害”とまで言い、根底からブチ壊そうとしている。「世界でいちばん企業が活躍しやすい国」とは、逆に言えば「世界でいちばん社員がこき使われる国」という意味なのだ。