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朝日新聞が誤報問題のトラウマで権力批判を放棄し“読売新聞”化?

 また、もうひとつ、懸念されているのが、吉田調書をスクープした特報部の解体だ。特報部はジャーナリズムのもっとも重要な役割である調査報道の専門部署として政治部や社会部から敏腕記者を集めて、2011年に発足。数々のスクープをものにしてきた。評価の高かった福島原発事故の検証連載「プロメテウスの罠」もこの部署の企画で、国の除染作業の手抜きをスクープした記事では新聞協会賞も受賞している。

「リベラル派からの反発を恐れてすぐに解体することはないでしょうが、何もやらせてもらえず飼い殺しにされるのは確実でしょう。ある意味、官僚化した朝日の中で最後の砦のような部署でしたから、ここがなくなるというのは痛手です」(同)

 実は、朝日新聞社という会社には、官邸や自民党、ネトウヨが敵視するような反権力性、左翼性はとっくに失われている。とくに1999年に経済部出身の箱島信一が社長に就任して「普通の会社になろう」というスローガンで社内改革を進め始めたあたりから、左派系の記者やトップ屋的な記者はパージされ、“建設的な政策提言のできる記者”、つまり権力に理解のある記者が徴用され、主流を占めるようになった。

 憲法についても政治部では改正派が多数を占め、社説で改憲を提言したこともある。経済政策も同様で、新自由主義的政策と財政規律を重視する姿勢は日経新聞とほとんど変わりがない。

 だが、それでも朝日の場合は、読売や産経ほどの露骨な権力すり寄りをすることはなかったし、読売や産経と違って社内的な言論の自由も最小限あったため、一部の心ある記者が自由に動ける領域がギリギリのところで確保されていた。しかし、今回のことでその最後に残されたジャーナリズムの良心のようなものが叩き潰されてしまうかもしれないのだ。

「木村社長はこの十数年の執行部の中では比較的リベラルなほうだった。その体制がこれで崩れると、主流はもっと政権よりの社内右派が握ることになる。特報部も解体されて、自由に動ける部署もなくなる。そのスタンスはかぎりなく読売新聞に近くなるかもしれませんね」(同)

 この国に読売新聞が2つもあっても、害悪を垂れ流すだけだと思うが……。
(田部祥太)

最終更新:2015.01.19 05:45

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