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JRでタブーになった「リニア新幹線」慎重論…「新幹線の父」の意見も封印

 山之内はまた、《赤字経営に悩まされ続けて、ついに分割民営化した国鉄時代の苦い教訓からすると、鉄道事業において、公共事業みたいに巨額の設備投資による借金を抱えつつの経営は企業を倒産に追い込んでしまう》とも語っていた(前間孝則『新幹線を航空機に変えた男たち』さくら舎、2014年)。この発言は2000年と、JR東海がリニア中央新幹線を自前で建設すると発表する前のものだが、そのために9兆円という建設費がかかることがあきらかになったいま読むと、JR東海という企業の存続にも不安を感じざるをえない。日本の大動脈を預かる企業の倒産が、多大な影響を与えるであろうことは容易に想像がつく。

 かつて日本と同じくリニアの研究開発が進められていたドイツでも、ベルリン~ハンブルグ間に路線を建設する計画があった。しかしこれは結局、2000年に中止されている。とても巨額の投資を回収できる見込みがなく、環境に悪影響を与え、在来線とのネットワーク化も不十分にならざるをえないなどの理由からだった。

 冒頭の繰り返しになるが、JR東海としては新幹線の成功体験をそのままリニアへと継承したいのだろう。だが、ここまで見てきたように両者は歴史的に“一直線(リニア)”につながるものではけっしてない。時代背景も、東海道新幹線が計画された高度成長期と、少子高齢化を迎えた現在とでは大きく異なる。本当にリニアは必要なのか、鉄道を利用する側としても、島秀雄をはじめ先人たちの意見を顧みたうえで、あらためて考える必要がありそうだ。
(近藤正高)

最終更新:2015.01.19 05:47

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