しかし、考えてみれば、それは当然のことかもしれない。そもそも自衛隊は戦闘の前線に行かないだけで、れっきとした軍隊だ。暴力の行使を目的とした組織は必ず、その暴力性を外部だけでなく、内部に向かわせていく。しかも、自衛隊は悪名高き旧日本軍のメンタリティを受け継いでいるのだ。鉄拳制裁が当たり前で、世界の軍隊の中でも桁外れに過酷といわれていた暴力支配。満州で関東軍が国民を見捨ていち早く逃亡したことに象徴されるような、上層部の無責任体質。まさにイジメや虐待が生まれる条件がすべてそろっているのだ。
しかも、こうした状況は集団的自衛権の容認によってより拍車がかかるだろう。「しんぶん赤旗」によるとアフガニスタン、イラクの両戦争に派兵された自衛官の中で、自殺者が2014年3月末時点で少なくとも40人にものぼることが報道されている。これは国民平均に比べ約3~16倍、自衛官全体と比べても約2~10倍の高い比率だという。
集団的自衛権容認を閣議決定した7月1日の直後、全国の18歳の若者に対し、一斉に自衛隊募集案内が送付された。集団的自衛権の容認が応募状況にどう影響するかは今の時点では不明だが、東日本大震災を契機に国民の自衛隊に対する好感度も上がっているのはたしかだ。
ネットは自衛隊に対する賛辞と期待の声であふれ、若い女性の間では自衛隊合コンが大人気だという。アニメや映画、小説などでも自衛隊や軍隊の活躍を描いたコンテンツが大人気だ。
だが、実際の自衛隊、軍隊という組織には、そうした「国民のために体をはって貢献する正義の士」というイメージとは全く逆の、もっと陰惨で残酷な現実がある。本書にはこんな一文が記されていた。
「自衛隊は、内部から変わる事の出来ない組織です」
(伊勢崎馨)
最終更新:2014.09.16 07:31