そして、戦中戦後の世代に多い「もったいない」「何かに使うかも」という意識だ。モノを捨てることに罪悪感を持つのがこの世代の特徴、生きてきた歴史だということも忘れてはいけない。そして、加齢による横着も加わる。
「年齢を重ねるにつれて、足腰は弱くなり、できないことが増え、物忘れが多くなってくるのは自然なこと。それを補うためには、生活に必要なさまざまなモノは、自分の手の届く範囲に置いておきたくなります。なまじ片付けてしまうと探すのにひと苦労。どこにしまったか忘れてしまうということになりかねません」(同書より)
そのため、片づけるよりは今のままが都合がいい。そんな老親たちの理由もあるのだ。
では、これらを念頭に、いざ実践! まずは「捨てろ!」という言葉は決していってはいけないNGワード。まずは「片付づけよう」という気持ちをそっと後押しするように、「ちょっと使ってないモノを整理してみましょうか」「たくさんあるので、少し減らしましょうか」と“提案”してみる。片づける必要などない!と思いこんでいる老親に、具体的に最後に使ったのはいつか、次に使う予定はいつかなど丁寧に聞きながら、自分で気づかせ、そして納得して「減らす」よう上手にもって行くのだ。
そして「まだ使える。もったいない」と思える品は、バザーやリサイクルショップに持って行くのもひとつの手だ。老親は「無駄にはしなかった。誰かの役に立った」と納得できるという。
そして、特に難しいのが古い嫁入り道具や子どもの写真などの思い出の品。たとえば、夫が亡くなった後、娘夫婦と同居することになった75歳の母が片づけられなかったのは、「娘時代にご両親が作ってくれた着物類や、当時はまだ持っていることがめずらしく、近所の友達にうらやましがられたという雛人形」だったという。さらに、子どもが幼少期にお気に入りだったぬいぐるみ人形、亡くなった友人の写真など、単に捨てるのは忍びないものばかり。
だが、このケースでは、雛人形は近所の人が事情を話すと喜んで引き受けてくれ、写真やぬいぐるみは供養の意味も込めてキャンディやお花と一緒に紙にくるんで処分したという。手間ひまはかかるが、思いを込め、それを周囲も尊重したことで「片づける」決意ができ、親の心も軽くなるのだ。