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ベネッセ事件は必然だった?「SE」という仕事のブラックな実態

 作られるプログラムにバグがあるのも当然で、プログラマ界隈では「この世界では他人の書いたコードを信用しちゃいけない。自分の書いたコードはもっと信用しちゃいけない」という格言があり、作った当人が平気で「自分がプログラミングした飛行機には絶対に乗りたくない」と口にするような世界なのだという。
 しかも彼らを雇う企業側も一筋縄ではいかないブラック揃い。この業界では人こそが財産であり、「原価=人件費」となる。だからこそ「安く仕入れて高く売る」ためには、真っ先にSEの給料がコストカットの対象になってしまう。
 たとえば人件費を少しでも安く上げるため、企業側は手をかえ品をかえ、様々な工夫をしているのだが、その最たる例が「年俸制」だろう。月の基本給の割合を低く抑え、この中に『一律いくら』の残業代を組み込むことで、労働基準法に引っかからないレベルの給与額になるように調整しており、さらに月の基本給がベースになるボーナスも低く抑えられてしまう。現実問題として、そうやって回さないと会社が立ち行かないというケースも多いのだ。

 これでは、現場のSEが肉体的にも精神的にも追い詰められても不思議ではない。SEの世界には、「徹夜作業中にウルトラマンだーと椅子でふざけている同僚がいて、最初は笑っていたのだけれど、あまりにしつこいので注意したら、精神的におかしくなっていた」という都市伝説があるそうで、著者の周囲でも、3分の2が精神を病んだり、どこかしらカラダを壊してしまったという。

 こんな環境で顧客の個人情報が扱われていることを考えれば、ベネッセ事件も氷山の一角でしかないのだろう。実際、この世界ではモラルもグダグダになっており、システム管理の責任者が他人のメールや社内の機密文書を見るなども珍しいことではなく、ある会社ではシステム管理者がこうした情報をネタに、同僚や部下に強請や恐喝をしていたことまであったという。
 
 著者はそんなSEの実態をこう嘆いている。
 「「カンヅメ状態」が当たり前であり、「夜遅くまで働いている」ことがデフォルトであり、「休みをくれ」と叫ぶなんて日常茶飯事な世界でありながら、なぜか「働くほどに小銭が貯まる」の法則が適用されない人たちがいる」「実におそろしく悲しくせつないお話ではあるけれども、現実にそうなんだからしょうがない」  
 この現実が変わらない限り、新たな情報流出事件が起きるのは時間の問題なのかもしれない。
(時田 優)

最終更新:2014.08.01 07:04

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