画像はミニアルバム『もしもし原宿』(ワーナーミュージック・ジャパン)より
「犯罪ですよ!」芸能人が無断撮影に対して、一斉に抗議の声を挙げ始めた。
買い物中に写真を撮られ、ツイッターにアップされたきゃりーぱみゅぱみゅが「友達と買い物してる時も盗撮される時代」「こうゆう人には塩対応だよ」とツイートしたのを皮切りに、市川海老蔵、有吉弘行、ダレノガレ明美などが相次いで不満を表明。これを受け、芸能人の無断撮影が違法かどうかという問題がネットメディアやテレビのワイドショーを賑わせているのだ。
特にネットニュースでは「マナー違反というだけでなく、法律上でも問題がある」と結論づけられていることがほとんど。当事者である芸能人側の主張のみならず、世間的にも「芸能人を勝手に撮影するのは犯罪だ」というような風潮が醸成されつつある。
しかしながら本当に、ファンとして撮影することや目撃情報として公開することまでもが犯罪行為にあたるのだろうか? であれば撮影者は逮捕されてしまうことになるが。
メディアでよく論拠として挙げられているのは「パブリシティ権」の侵害だ。そもそもパブリシティ権とは、その呼称が示すとおり、公表や宣伝、広告に関わるものである。たとえば、有名人などの肖像は商品の販売などを促進する力を有す場合が多い。この力を「顧客吸引力」と呼ぶ。しばしばテレビCMに好感度の高いタレントが起用されるのも、顧客吸引力の存在を大勢が想定しているからだとも言える。
冤罪事件やメディア問題を巡る訴訟を数多く手がけ、報道と人権問題に関心の高い芳永克彦弁護士に話を聞いた。
「パブリシティ権の侵害になるのは、撮影した写真をブロマイド屋に持ち込んで、金に換えたといったレアなケースに限られる。今回の事例のように、一般人がタレントの写真を撮って個人で楽しむ、ツイッターに投稿する、あるいは友人に送るという行為だけでは、まずパブリシティ権を侵害するとは一般的に考えられにくい。それから、パブリシティ権の侵害であれ肖像権侵害であれ、それ自体は犯罪にあたりません。違反した場合には、民事上の不法行為として損害賠償を請求されたり、差止め請求を受けることがあるということであって、犯罪として処罰されるわけではない。どうもここには、一般の誤解がありそうです」