京都のガイドブック制作には、京都ならではのなみなみならぬ苦労が……
夏本番の暑さを迎える7月。京都は日本三大祭に数えられる祇園祭一色に染まる。しかも、今年は前祭(さきまつり)に統合されていた後祭(あとまつり)が49年ぶりに復活。ハイライトである山鉾巡行が2回行われ、かつて巡行のしんがりをつとめた大船鉾が150年ぶりに復興することもあり、いっそうの盛り上がりを見せているのだ。
ぜひ、ガイドブックを片手に、この夏京都を訪れてみてほしいのだが……じつはそんな熱に浮かされることなく冷や汗をかいているのが、ガイドブックを発行する各出版社だ。山鉾巡行が2回行われることで、来場者数が増えて本の売れ行きもよくなる、なんてお気楽ムードはない。祇園祭のスケジュールが大きく変わったことで、今まで発行していた書籍の改訂や新刊の発行に追われて大わらわ。しかも、単に加筆修正したり、新しく本を作るだけならまだしも、そこには悠久の歴史を誇る京都ならではの“お金の問題”が横たわっているのだ。
その問題とは、祇園祭の主役ともいえる山鉾の写真。巡行当日は、プロやアマチュアを問わず、多くのカメラマンが迫力ある山鉾を撮ろうとシャッターを切る。ここまではいいのだが、この撮影した山鉾の写真を雑誌や書籍に掲載するとなると、お金を払わなければいけない。別に写真を貸してもらったわけでもないのに、お金がかかるのだ。東京在住の編集者なら「え、なんでお金を払うの?」とびっくりするだろう。
たしかに、他の街だと、祭りやイベントを取材してお金を要求されることはほとんどない。営利企業のテーマパークだって取材許可がおりれば、普通、謝礼は必要ない。しかし、京都、祇園祭は特別なのだ。
しかも、驚くべきはその値段。たった写真一枚に、およそ1~5万円の金額を「礼金」という名目で要求される。一体、どこに支払うのかというと、山鉾を保有する各山鉾町をとりまとめる「公益財団法人祇園祭山鉾連合会」。ここが窓口となり、各山鉾町へお金を納めることになるのだ。さらに山鉾によって「格」の差があり、20メートルを超える鉾は人気が高く、掲載料もぐんと高い。ちなみに今年、巡行に登場する山鉾は33基。ガイドブックの中で1基ずつ山鉾を紹介するとなれば、それだけでも数十万円の予算が必要になる。豪華絢爛な山鉾を載せずに本を作るわけにもいかず、出版不況と言われて久しい業界のお財布事情をさらにひっ迫しているのである。