『木嶋佳苗 法廷証言』(宝島SUGOI文庫)
2009年に発覚した、いわゆる首都圏連続不審死事件で殺人などの罪に問われ、死刑判決を受け最高裁へ上告中の木嶋佳苗被告が今年6月、ブロマガをスタートさせた。
ニコニコチャンネルに開設されたのは「木嶋佳苗チャンネル」。トップページには木嶋被告の顔写真とともにチャンネル説明として「「平成21年(わ)第1809号等(詐欺、詐欺未遂、窃盗、殺人)」の被告人である木嶋佳苗が拘置所生活のなかで綴った自伝的小説「礼賛」をお届けするチャンネルです。 このチャンネルではブロマガ形式で小説本編を公開していく予定です。」とある。購読するためには月額864円(税込)が必要となっている。
木嶋被告は今年に入ってから支援者の手を借り「木嶋佳苗の拘置所日記」というブログを開設し、拘置所での生活の様子などを発信していたが、4月に入って「木嶋氏よりブログを商業ベースで個人契約にて行うと申し出があり、今後当ブログは有料メルマガに移行致します」との予告とともにブログの更新は終了していた。
「木嶋佳苗チャンネル」でスタートした「礼賛」については、昨年10月に発売された「女性自身」(光文社)が、木嶋被告が拘置所内で書き溜めた私小説があること、大学ノートなんと41冊分もの分量があること、そのタイトルについては「『男性礼賛』がいいかしら?」と木嶋被告が述べていた事などが報じられており、このノートの中身と今回の「礼賛」は同一のものと思われる。
「北国で生まれ育った幼少期から、単身上京して『普通ではない世界』へと足を踏み入れていく少女の成長と心の内面を赤裸々に描きます」と紹介文にある「礼賛」、第0話は主人公、木山花菜が身柄を拘束されて移送中のシーンからスタートする。後半からは恋愛について回想し、以降、第1話からは木山の幼少期のエピソードが続いている。「自身」にはこの私小説の過激なセックス描写も一部引用されており、今後の更新でそうした内容が発信されていくことだろう。
かつては身柄拘束されている被疑者や被告人、確定死刑囚や受刑者が外部に向け情報を発信するのは書籍や書簡の雑誌掲載が主であった。獄中手記として有名なものは永山則夫による『無知の涙』(河出書房新社)だろう。4人を射殺し死刑が確定した永山は獄中で本を読みあさり、手記だけにとどまらず小説も執筆し続けた。