大阪入管の酒酔い医師、入管職員がアフリカ系男性を強制送還時に暴力行為 次々明らかになる入管の実態
しかも、問題のすり替えはこれだけではない。立憲が齋藤法相の問責決議案を提出した際、自民の梶山弘志幹事長代行は「旧態依然とした手法によって審議を停滞させることは令和の国会にはふさわしくない」と述べ、維新の音喜多駿政調会長も「時間稼ぎにしかならない」「無理やり反対・日程闘争の非生産的野党」などと批判した。ようするに、自民や維新は「旧態依然」「無理やり反対」と切り捨てることで問題の本質を覆い隠そうとしたのだ。
しかし、音喜多政調会長が「時間稼ぎ」と批判した問責によって委員会採決が止まっていたあいだにも、法案のデタラメぶりを示す新事実が明らかになった。
実際、齋藤法相が隠蔽してきた大阪入管の酒酔い常勤医師問題については、共産党の仁比聡平参院議員が6日、独自入手した大阪入管の入国警備官が書いた内部報告書を会見で公表。この報告書によると、問題の常勤医師に今年1月20日、呼気アルコール濃度検査を実施したところ最大0.36ミリグラムという高い濃度のアルコールを検出。これは免許取り消しになるレベルのものだ。この日以降、問題の常勤医師は医療業務からは外れているという。
ところが、齋藤法相はこの酒酔い常勤医師の問題を今年2月に把握しながら、その事実を隠蔽し、4月に法案を提出。大阪入管では常勤医師が医療業務から外れているにもかかわらず、入管庁は資料に4月1日時点で「大阪入管・常勤医師1名」と虚偽情報を記した上、齋藤法相も法案審議の場で平然と「常勤医師の確保などによる医療体制の強化など改革の効果が着実に表れてきている」などと嘯いてきたのである。
さらに、最近になって、難民申請が不認定になったアフリカ系男性が強制送還される際の動画が公開。この男性は難民不認定の異議申し立てが却下されたその日のうちに成田空港に送られたといい、動画では空港の待機室において無抵抗の男性に対して5人の入管職員が両腕を後方にねじ上げるなどの暴力を振るい、男性が悲鳴をあげる場面などが収められていた。ちなみに、男性はその後、入管庁を相手に裁判を起こし、東京地裁は「入管当局が強制送還を果たすため、男性が棄却決定に対して司法に不服を申し立てる機会を意図的に奪った」と認定している。入管法改正案がこのまま成立してしまえば、このような違憲の強制送還を合法化するだけでなく、こうした暴力行為をともなった強制送還がさらに繰り返されることになるだろう。