元首相が北海道に出向いて記者の講義に登壇(安倍晋三Twitterより)
昨日7日、朝日新聞が朝刊で公表した記者の懲戒処分が大きな波紋を呼んでいる。なんと、朝日のスター記者が、安倍晋三・元首相の“代理人”として他媒体の記事に“介入”していたからだ。
その記者とは、編集委員の峯村健司氏。中国総局員やアメリカ総局員を経験するなど外交・安全保障や米国・中国を専門分野としてきた記者で、2011年には中国問題の積極的な報道が評価されボーン・上田記念国際記者賞を、2021年にはLINEが中国の関連会社から個人情報を閲覧できる状態にしていたことをスクープし新聞協会賞(ニュース部門)を受賞。こうした一連の実績は「反中」のネトウヨ論客からも一目置かれ、実際、安倍応援団のひとりである有本香氏は以前から「朝日の良心」として事あるごとにベタ褒めしてきた。
さらに、今年1月からは『ひるおび』(TBS)の木曜レギュラーを務めるなど、コメンテーターとしても活躍。先月3月20日には朝日新聞社を4月20日で退社することを公表しており、今後はさらにメディア露出が増えていくと見られていた。
しかし、その退社まで約2週間というタイミングで発表された今回の懲戒処分と処分にいたった経緯は、記者・ジャーナリスト失格と言わざるを得ない、驚愕のものだった。
朝日の調査結果はこうだ。先月3月9日、ダイヤモンド社が発行するビジネス誌「週刊ダイヤモンド」が安倍晋三・元首相にインタビューをおこなったが、翌10日夜に安倍インタビューを担当した副編集長のもとに峯村氏から入電。そこで峯村氏は、こんな要求をおこなったというのだ。
「安倍(元)総理がインタビューの中身を心配されている。私が全ての顧問を引き受けている」
「とりあえず、ゲラ(誌面)を見せてください」
「ゴーサインは私が決める」
新聞社の現役記者が、つい数年前まで首相として絶対的権力をふるってきた安倍の名前を出して「私が全ての顧問を引き受けている」と言い出す──。この事実だけでも衝撃的だが、さらには「ゲラを見せろ」「ゴーサインは私が決める」などと他社の記事に介入、検閲しようとしたというのだ。
言っておくが、本来、報道において、記事を事前チェックするなどというのはありえない。しかも、今回のインタビューは元首相であり現役の国会議員、つまり為政者である。たとえインタビューを受けた当人だとしても、政治にかかわる人物が記事の事前検閲を求めるというのは国家権力による報道への介入につながる行為であり、認められるものではない。