東京五輪招致委がプレゼンで開催時期の東京を〈理想的な気候〉と真っ赤な嘘
ようするに、為末氏は猛暑への懸念を“反安倍”とレッテル貼りをしたのだ。
当たり前だが、当時、酷暑での五輪開催を心配する声をあげていたのは、安倍政権に批判的な人たちだけではなかった。3年前の夏は記録的な猛暑が続き、海外やスポーツ関係者の間からも「こんな猛暑でやったら生命にかかわる」という声があがっていた。
しかも、政府も組織委も一向にまともな暑さ対策を打ち出さず、国土交通省にたっては「打ち水のほか、浴衣、よしずの活用など日本ならではの対策を盛り込む」などと言い出す始末だった。
そのため、メディアもこの問題を取り上げ、多くの国民が「なんとかしろ」と声を上げ始め、実際、翌年には、国際的な問題にもなって、IOCが動き、マラソンの開催地が東京から札幌へと変更されることにもなった。
ところが、為末氏は「反安倍」とレッテル貼りすることで、そうした声を封じ込めようとしたのである。まさに隠れ安倍応援団の面目躍如といったところだが、こうした批判封じ込めの結果、東京五輪はまともな酷暑対策もなされず、酷暑の時間に競技スケジュールが組まれた。そういう意味では責任の一端は為末氏にもあるといっていいだろう。
しかも、為末氏は、現実に五輪が開催され、酷暑の中で選手が倒れ、海外の有名選手が怒りの声を挙げ始めたとたん、過去のツイートなどなかったかのような風情で、〈このあたりも選手への負担が大きすぎます。〉などとうそぶくのだから、いい加減というほかはない。
ただ、一方で、機を見るに敏な元アスリートが態度を豹変するのもわからなくはない。
というのも、この先、もし酷暑のなか競技強行で、選手の生命に関わるような事態が起きたら、国際社会で日本側の責任が問われる可能性があるからだ。
実は、五輪招致時、東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会がつくった「立候補ファイル」のなかにある「2020年東京大会の理想的な日程」という項目で、五輪が開催される7〜8月の東京について〈この時期の天候は晴れる日が多く、且つ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である〉などと、真っ赤な嘘をついていた。
すでに、今回のジョコヴィッチらの怒りの声を受けて、海外のメディアでは、「日本の五輪組織委は気候について嘘をついた、そのツケをいまアスリートたちが払わされている(Japan's Olympic organizers lied about its weather, and now athletes are paying the price)」(「yahoo! sports」7月26日)などといった報道が出始めている。
この酷暑問題の嘘については、また追って検証記事を出すつもりだが、いま、起きている問題は、とにかく五輪を強行したという連中の嘘とインチキを放置していた結果であることを再認識し、改めてその責任を追及していく必要があるだろう。
(伊勢崎馨)
最終更新:2021.07.26 10:56