河野太郎英語版Twitter
菅義偉首相が「全国民のワクチン接種を11月までに完了」とぶち上げてから約1カ月。いよいよワクチンの一般接種が本格化するかと思いきや、ここにきて深刻な事態に陥っている。国からのワクチン供給不足により、予約の新規受け付けを停止する自治体が全国で続出しているからだ。
大阪府大阪市では集団接種や各医療機関での個別接種の1回目接種を今月12日から一時停止すると発表。各医療機関が今月12日以降受け付けた1回目の接種の予約は8月以降にずらすよう求めている。また、兵庫県神戸市では6月以降、ファイザー製ワクチンが市の希望量に対して国からの供給量が半分以下に。7月も希望を大幅に下回る見込みであるとし、すでに予約済みの少なくとも約5万人の1回目接種予約をキャンセルすると発表した。
さらに、7月5日以降に予定していた基礎疾患のない59歳以下の予約受け付けを延期すると発表した兵庫県明石市では、泉房穂市長が供給不足を先月25日に西村康稔・経済再生担当相へ直接訴えたものの、「県にお願いするか、自分で他の市に掛け合ってくれ」と袖にされたことを公表。TBSの取材では、泉市長は「明石市はスピード感をもって対応した結果、国の対応によっていきなり接種できなくなる」「本当に国を信じた結果、市民に迷惑をかけることになって、市長としては『国を信じてごめんなさい』という感じ」と語っていた。
この泉市長の言葉が象徴的であるように、混乱の元凶は国、菅政権にある。菅政権は「7月末までに高齢者接種を完了させる」とぶち上げたあと、自治体に対して圧力をかけてまで接種スピードを早めろと急かしてきたからだ。
とくにその強権性をむき出しにしてきたのが、ワクチン担当の河野太郎・規制改革相だ。河野大臣は不具合が頻発していた「ワクチン接種記録システム」(VRS)の問題も棚に上げて、「(VRSへの入力が)あまりに遅いところは1クール(2週間分の配送)飛ばすこともあり得る」などと露骨な恫喝をかけた。本来は自治体の声をよく聞き、問題を調整・解決しながら要望に応えるといった密な連携が図られるべきなのに、一方的に“お上の指示に従え”と言わんばかりに振る舞ってきたのだ。
ところが、河野大臣は昨日2日、7月下旬のワクチンの配分量が希望量の3分の1あまりりになるとして「希望量の配送ができない」と発言。「今後は、手持ちの在庫をうまく使いながら、スピードを最適化して、供給量に応じたスピードをお願いをしたい」と言い出したのだ。
「手持ちの在庫をうまく使え」というのは、あたかも自治体が在庫を溜め込んでいるような言い方だが、実際には、首都圏の1都3県では〈すでに予約されている分を除くと「在庫」のワクチンは一切ない〉(日本テレビ2日付)という状態となっているのだ。だいたい、これまで一方的に“もっとスピードアップしろ”と号令をかけておいて、いまになって「スピードを最適化しろ」とは、身勝手にも程がある。