黒川検事長問題の追及を嫌がって会見を放り出した安倍前首相のケースを言い訳に持ち出した菅首相
国民への説明責任を果たす場を放り出しておいて、この態度──。舐めきっているとしか言いようがない。最悪なのが、菅首相が会見を開かなかった言い訳にあげた「昨年の関西圏を解除したときは(会見を)おこなっていない」という発言だろう。
たしかに、昨年4月7日に安倍晋三・前首相が全国一斉で緊急事態宣言を発出した後、5月21日に関西3府県の宣言を解除する際に会見をおこなわず、ぶら下がり取材で済ませている。このときはちょうど黒川弘務・東京高検検事長が賭けマージャン問題で辞表提出するタイミングと重なっており、安倍前首相も全国に生放送される会見でその問題の追及を受けるのを避けるために我が身可愛さで会見を放り出したのである。
ようするに、その「前例」を利用して、菅首相も国民への説明よりも保身に走っただけなのだ。「悪しき前例主義を打破する」という掛け声は一体何だったのか。
しかも、今回の菅首相の会見を放り出しは昨年のケースよりもっと罪が重い。というのも、今回の宣言解除は昨年の解除時以上に疑問の声があがっており、菅首相の説明が求められる問題が山積み状態だからだ。
まず、今回宣言が解除されるなかでも不安視されているのが福岡県だ。福岡県は他の府県とくらえてもいまだ病床使用率が高く、専門家などから先行解除に対して慎重な意見が出ていた。そうした慎重論を無視し、菅首相は昨日、福岡県も解除する方針を固めたのだ。この病床使用率の高さを、菅首相はどう考えているのか。
さらに大きな懸念を生んでいるのが、変異株の問題だろう。昨日25日の時点で国内で確認された変異株の感染者は200人を超えた。変異株の種類も増えている上、変異株は感染力が高いとされており、実際、昨日発表された神奈川県在住の変異株に感染した男性は〈県内での市中感染の可能性が高い〉という(神奈川新聞25日付)。変異株の市中感染が広がっている可能性が濃厚ななか、都市部での宣言解除をおこなうのだから、変異株の調査と封じ込め策について、菅首相にはしっかり説明する必要がある。