安倍の投稿はデマ!裁判所は植村氏の「捏造」を「確定」なんてしていなかった
今回、そのひとつである櫻井よしこ氏との裁判で、最高裁が植村氏の請求を棄却したというわけだ。
しかし、最高裁は植村氏の記事を「捏造」だなどと一言も言っておらず、一審=札幌地裁の判決を支持したにすぎない。
そして、札幌地裁もまた、植村氏の記事を「捏造」だと認定していない。長い判決文の隅から隅まで読んでも、「原告の記事は捏造であった」「原告は捏造記者である」、あるいは「原告は事実と異なることを知りながら記事を執筆した」などといった記述は一切出てこない。
それどころか、判決文は櫻井氏側の主張のほうを「真実であると認めることは困難」としていた。
櫻井氏は植村氏を攻撃する記事で“金学順さんは継父によって人身売買されて慰安婦にさせられたのに、植村氏はそれを知りながら意図的に書かないことによって強制連行を印象付けようとした”という主張を展開していたのだが、判決文は〈「継父によって人身売買され慰安婦にさせられた」という事実が真実であると認めることは困難である〉と言及していたのだ。
判決自体は植村氏の請求を棄却しているが、それは櫻井氏の記事が「真実」と認められたわけではなく、「真実と信じる相当の理由があった」ことが認められたからにすぎなかった。名誉毀損裁判では表現の自由を尊重する立場から、それが真実でなかったとしても、真実だと信じてもやむをえない状況や理由、つまり「真実相当性」があれば、悪意はないとして違法性は阻却されることになっている(実際の裁判ではそういうふうには運用されていないが)。今回はそれが適用されたに過ぎず、櫻井氏の主張の真実性、つまり植村氏の記事が捏造であることが事実と認定されたわけではないのだ。
にもかかわらず、安倍前首相は「請求棄却」という点のみをもって、「植村記者の捏造が確定」などというまったくのデマを拡散。植村氏への個人攻撃を扇動した。
安倍前首相は以前、菅直人元首相から訴えられた裁判でも、同様のすり替えデマをやっている。福島原発事故の後、安倍前首相がメルマガで〈やっと始まった海水注入を止めたのは、何と菅総理その人だったのです〉〈これが真実です〉と断言したが、これは完全にデマだった。海水注入を止めるよう指示したのは東京電力の武黒一郎氏であり、福島第一原発の故・吉田昌郎所長はその指示を無視して海水注入を継続させたというのが“真実”であり、これは吉田所長も証言していた。
しかし、東京地裁が「記事は事故対応の詳細が判明する前に発信されていた上、菅元首相の資質や政治責任を追及するもので公益性があった」などとして真実相当性を認め、菅直人氏の請求を棄却すると、安倍首相は「私をおとしめようとした訴訟で、菅氏に猛省を求めたい」などと説教強盗のようなコメントを出したのである。