辞任会見する安倍首相(首相官邸HPより)
7年8カ月にもおよんだ“暴政”が、またも無責任なかたちで幕を閉じようとしている。昨日28日、持病の潰瘍性大腸炎の再発を理由にした電撃的な辞任劇が繰り広げられたが、その記者会見で安倍首相は、あまりにも自分勝手な主張を並べ立てたからだ。
たとえば安倍首相は、辞任を決めたのは2回目の再検査で慶應義塾大学病院入りした24日の月曜日だったと明かしたが、そのタイミングで辞任を決めたことについて、「まさにコロナ禍のなかにおいて、政治的空白を生み出さないようにする上においてはですね、このタイミングで辞任するしかないという判断をいたしました」と述べた。
政治的空白を生まないようにする……? このコロナ禍の最中に通常国会を閉会し、憲法に基づいて臨時国会の開催が要求されてもそれを無視、知事や医師会から「特措法改正を国会で議論してほしい」「コロナに夏休みはない」という訴えが飛び出しても、「事態が収束したあとに検討する」などと言い放って「政治的空白」をつくりつづけてきた人間が何を言うか、という話だ。
あまりにも当たり前のことだが、このような状況にあって国会を閉会したこと、国会招集要求を無視するという憲法違反を犯していること、そして国民にしっかり説明する機会も設けてこなかったこと、そうした無責任な態度は「病気だから辞任します」と言って免責されるものではまったくない。
しかも、安倍首相は辞任を決めたという24日は「これからまた頑張りたい」などと語っていたが、一方で裏腹にも安倍首相の周辺はしきりに健康不安説や重病説を流布、国民に動揺や不安を与えてきた。
当然、記者会見の質疑応答では、感染拡大の最中に国民への説明を放置しつづけてきたことや、健康状態をめぐって混乱を巻き起こしたことの責任について、記者から厳しい質問が投げつけられるだろう、そう思っていた。なにせ、相手は辞任する人物だ。最後の最後になってしまったが、これまでの安倍政権のあらゆる疑惑・不正問題を含め、ガチのやりとりが見られるはず──。そんな期待を抱いて会見を視聴したが、そこで展開されたのは、信じられないような光景だった。
なんと、ほとんどの記者、とりわけ内閣記者会の常勤幹事社の記者は「後任の決め方は?」(日本テレビ)、「後任の総裁選びに対する姿勢は?」(日本経済新聞)、「後継候補の評価は?」(朝日新聞)などといった後継にかんする質問や、「政権で成し遂げたことのなかでレガシーと思うものは?」(読売新聞)、「今後、外交に取り組まれる意欲はあるか?」(テレビ朝日)、「総理が考える総理・総裁に必要な資質とは?」(産経新聞)などというヌルい質問に終始したからだ。