東京2020組織委員会からの抗議文に「語るに落ちた」と敢然と反論した久米宏
この放送回では、久米はその抗議文を読み上げた。その内容はこういうものだった。
「第32回オリンピック競技大会においては招致の段階で、開催時期は2020年7月15日から8月31日の期間から選択するものと定められていました。この期間外の開催日程を提案した招致都市は、IOC(国際オリンピック委員会)理事会で正式に候補都市としてすら、認められていませんでした」
この東京2020組織委員会からの手紙を朗読したあと、久米はこうつづけた。
「こういう反論をなんて言うか、知っていますか? こういうのを『語るに落ちる』って言うんです(笑)」
「つまり日本にオリンピックを招致した人たちは、夏の開催だっていうことを承知して引き受けたんですよ。つまり、東京オリンピックに世界中から集まるアスリートたちのコンディションのことを考えたんじゃないんです。オリンピックを招致することがいかに大切かを考えたんです。つまり、『アスリートファースト』というのは嘘八百なんですよ。オリンピックを招致することが目的だっていうことをもう言っているんです、ここで」
日本では酷暑にぶつかる時期の開催であることをわかっていながら招致する。久米は「日本にオリンピックを招致した人たちは、スポーツを愛していない。オリンピックだけを愛しているんだ。だからバカなんだ」と吠え、「IOCの理事会はなぜ夏の開催じゃなきゃだめだと言っているかというと、これはアメリカの三大ネットワークが出す金(の問題)です」「ほとんどは金なんですよ。オリンピックもゼネコンにいく金なんです。基本的にお金の巣窟なんですよ、オリンピックっていうのはね」とオリンピック自体が構造に金勘定が優先されていることを指摘。さらに、こんな疑念を挟んだのだ。
「8月9日が閉会式ということは、僕は勘ぐるほうですから、8月9日って長崎に原爆が落ちた日なんですよ。当然、広島に落ちた8月6日も、3年後はオリンピックの真っ最中なんです。広島の原爆慰霊の日も、長崎の原爆慰霊の日も、東京でオリンピックのバカ騒ぎをしているんです、3年後は。そうすると、東京にオリンピックを夏に招致した人たちは、原爆が落ちた日、長崎に落ちた日も広島に落ちた日も、やがてはなかったことにしたい。そのために真夏に東京でオリンピックをやるんじゃないかと、僕はゲスの勘ぐりをしている。これは勘ぐりしすぎでしょうかね?」
わざと原爆の日にぶつけたというのはさすがに「ゲスの勘ぐり」にしても、安倍首相が毎年のように広島・長崎で「コピペ演説」を繰り返していることを考えるとオリンピック一色で今年の原爆の日が蔑ろにされる可能性は高いだろう。いずれにしても久米が何度も言ってきたように、酷暑開催は様々な競技の選手や観客にかかわるものであり、マラソンと競歩だけを札幌開催したところで、いまも問題は解決していないのである。