来年6月、ポイント還元制度が切れてさらに悪化。五輪が終わると、日本経済はどん底に
しかも、注視しておかなければいけないのは、こうした景気悪化を示すデータがプレミアム商品券とポイント還元制度という消費増税にともなう「景気対策」を施したうえでの数字だということだ。とくにポイント還元制度は中間層から富裕層の利用率が高く、格差助長の一方で、消費維持対策としては効果があったと言われていた。しかし、この制度が実施されるのは2020年6月まで。これが過ぎると、一気に消費が冷え込むのは間違いない。
さらに、この悪夢のシナリオに拍車をかけるのが東京オリンピック・パラリンピックの存在だ。2020年は五輪で全体的に消費が伸び、指標上で景気が好転して見えるかもしれないが、これはあくまで一時的なもの。閉会と同時に打ち止めだ。消費や投資の反動が確実にやってきて、景気を直撃する。いわゆる「五輪不況」である。
インフラ特需やインバウンドなど経済効果ばかりが強調される五輪だが、実は、歴代の夏季大会開催国の経済成長推移を見ても、大会翌年の経済成長率は大会前年を下回るケースが多い。たとえば2008年の北京大会の場合、14%台だった2007年の成長率が、大会後の2009年には9%台まで下落。日本の場合も、前回1964年東京大会の翌年には一気に経済成長率が落ち、大会前年と比較すると企業の倒産件数は約3倍にもなった。
しかも、今回の場合は「アフター五輪不況」どころではない。前述したような経済動向のデータを見ると、来年頭から「ビフォア五輪不況」が本格化する恐れが高いのだ。
これはたんに景気が悪くなるというだけでは済まない。経済が冷え込めば、必然的に国の税収全体が低調となり、失業保険や生活保護費など社会保障費の増大が生じる。財政は消費増税前より悪化し、“社会保障費カット”はさらに進み、貧富の格差はもっと激しくなる。待っているのは、これまで以上の財政悪化と消費減少という負のスパイラルだ。
国民生活を一気に困窮させたうえ、逆に財政を悪化させる消費増税という愚策を断行した安倍政権には怒りしか湧いてこないが、しかし、この経済悪化はその安倍政権に対しても、大きな打撃を与えることになるはずだ。これまでどんなデタラメな政策や不正をやっても安倍政権に支持があったのは、表向き「経済が悪くない」ということをアピールしてきたからだ。しかし、さらに景気が悪化すれば、さすがにそんな詐術は使えなくなるだろう。
そういう意味では、この消費増税による景気後退は安倍政権にとって“終わりの始まり”になる可能性があるのだ。