白石和彌監督が語っていた日本の民主主義と映画への危機感と問題意識
白石監督は2019年4月12日付朝日新聞のインタビューで「いま、民主主義が経年劣化を起こしています。それに変わるシステムを生み出す力は人類にはもうありません。だからまたファシズムに戻るのではないか」と、現在の世界・日本への問題意識や危機意識を話している。
実際、『麻雀放浪記2020』で出てきたディストピア描写も「絵空事」ではない。
デモを行う市民に対して警察が暴力を行使する場面は、国会前のデモや、沖縄で起きていることを想起せずにはいられないものだ。
また、過剰な監視社会化も現実の日本で起きていることである。街中にはりめぐらされた大量の監視カメラは言うまでもなく、Tカードの個人情報横流し事件や、政府による「東京オリンピック開催に向けたサイバー攻撃対策」という名目で一般市民のIoT機器への無差別侵入など、監視社会化・警察国家化はどんどん進行している。とりわけ安倍政権が、共謀罪など、市民の監視、言論弾圧体制を強化する法整備を強化していることも本サイトで繰り返し指摘している通りだ。
もちろん『麻雀放浪記2020』はあくまで「麻雀」をテーマにしたエンタメ作品だ。こうした権力批判的な描写や設定は、メインのストーリーと直接的に絡んでいるわけではない。しかし『麻雀放浪記2020』は、日本映画のなかに「風刺」的な側面を意識的にもちこむことで一石を投じている。それは間違いない。映画公式パンフレットのなかで白石監督はこのように語っている。
「社会風刺やブラックなコメディの映画って、海外にはたくさんあるじゃないですか。でも最近の日本は無菌状態というか、社会のおかしな部分を笑い飛ばすような映画が極端に少ない」
白石監督が語る日本映画の現状はまさしくその通りだ。ピエール瀧問題への対応も含め、『麻雀放浪記2020』のような勇気ある作品が多く生み出されることを切に願う。
(編集部)
最終更新:2019.04.14 03:14