元号を発表する菅官房長官(首相官邸HPより)
統計不正に「忖度道路」問題と安倍政権の膿が飛び出しつづけているにもかかわらず、統一地方選前半の道府県議選では自民党が前回よりも議席を伸ばし総定数の過半数を占めた。不正や政治の私物化が表沙汰になっても“問題が問題化しない”この現状を見るにつけ暗澹たる思いに駆られるが、それはネットにおいて政治絡みでいまもっとも関心を呼んでいる、あの騒ぎにも言えることだ。
そう。いま、ネット上で菅義偉官房長官が「令和おじさん」として人気が急上昇している件だ。
今月1日、新元号発表をおこなったことによって若い世代から「令和おじさん」と呼ばれるようになった菅官房長官。過去にも当時官房長官だった小渕恵三が「平成おじさん」と呼ばれたから今回も不思議はない話だが、SNSでの菅官房長官の人気はすさまじく、〈さぞ激務であろうにそれをおくびにも出さず淡々と職責を果たされる普段の姿とのギャップがまた良い〉〈はにかんだ笑顔が良いです〉などといった投稿が続出。菅官房長官がパンケーキを頬張る画像などを添付した〈やばい菅官房長官知れば知るほど推せる〉という投稿は、なんと32万を超える「いいね」が押され、大拡散されている。
「安倍政権のゲッベルス」として安倍首相の強権的な政治運営を支えてきた菅官房長官が、パンケーキ好きというだけで「推せる」と言われてしまう。──なんとも気持ち悪いこの現象だが、5日の定例記者会見でも「いまネットで『令和おじさん』と呼ばれているという報道があったが」と質問が出て、菅官房長官は「承知はしてますけど、ピンときてないですね」と返答。こういう質問にだけはきちんと答えるのかとウンザリさせられるが、当の菅官房長官はニッコリと笑い、まんざらでもない様子だった。
しかも、この吐き気を催しそうな状況に丸乗りしているのが、テレビのワイドショー。きょう放送された『ひるおび!』(TBS)と『大下容子ワイド!スクランブル』(テレビ朝日)では、菅官房長官の特集が組まれたのだ。
まず、『ひるおび!』(TBS)では、北海道知事選や大阪ダブル選で上手く立ち回ったのが菅官房長官であり、勝利に導いた立役者として紹介。さらに、塚田一郎・前国交副大臣の「忖度」発言についても辞任を進言したのは菅官房長官だとし、司会の恵俊彰は「非常に早い火消しでしたという評価でした」「菅さんって今週かなり目立っている」と語った。
現役副大臣が「私は総理や副総理を忖度します」と公言するなど前代未聞、言語道断の発言で、むしろ即刻罷免しなかったところに安倍政権の国民をバカにした態度が見てとれる。そもそも焦点にすべきは発言どおり「忖度」があったのかどうかだ。それを検証することもなく、数日経って辞任させたことを「早い火消し」などと評価する時点でどうかしているとしか思えない。
しかし番組は、菅官房長官の“苦労人”話や安倍首相との信頼関係といったエピソード紹介にばかり時間を割き、八代英輝弁護士は「さすが法政大学空手部だけあって笑顔がシャイですね」などとコメント。さらに田崎史郎氏はここぞとばかりに「今年、携帯料金下がりますけど、それも菅長官なんです」とアピールしたのだ。
おいおい、ちょっと待ってくれ。たしかに菅官房長官は携帯電話料金問題を節目節目でぶち上げ、昨年の沖縄県知事選では街頭演説で「携帯料金を4割程度引き下げる方向に向かって実現をしたい」と宣言した。だが、そもそも国には携帯料金値下げの権限はなく、今年の値下げというのも10月の楽天の参入に引きずられたものでしかない。現に、値下げを促す改正案が先月閣議決定されたが、実際に値下げとなるかは不透明だ。にもかかわらず、あたかも菅官房長官が携帯料金を値下げさせるような田崎氏の発言は、ただのフェイクでしかないだろう。