安倍首相「総雇用者所得は増えている」のまやかし、実態は高齢者と非正規
そして、この期に及んで都合の悪い数字を隠蔽し、それを誤魔化すために安倍首相が言い出したのが、「平均賃金が下がっていても仕事は増えている。総雇用者所得のほうが経済の実態を表している」という主張だ。
「総雇用者所得」は国内の労働者全体が受け取った賃金の総額にあたり、安倍首相は総雇用者所得が名目・実質ともに伸びていることを根拠に“働く人が増えて稼ぎが増えた”“所得環境は改善している”と言う。しかし、これはすでに12日の衆院予算委員会で共産党の志位和夫委員長が問題点を指摘している。
というのも、安倍政権の2012〜2018年のあいだに就業者は384万人増えたが、そのうち266万人は65歳以上の高齢者。15〜24歳の就業者も90万人増えているが、その内訳は高校生・大学生等が74万人も増えている。また、15〜64歳の女性就業者も増えているが、非正規が多く、賃金も低い。つまり、年金では生活できない高齢者や、家計が苦しく働きに出る女性、生活苦の学生たちのアルバイトなど、低賃金で働く人が増えているにすぎないのである。
さらに、昨日の集中審議では、統計問題での鋭い質問で注目を浴びている無所属の小川淳也議員が、さらにこんな指摘をおこなった。
「賃金が低い方が増えたことで下がるのは、名目賃金なんですね。実質賃金が下がるのはひとえに、名目賃金の上昇が物価上昇に追いつかない場合に起こるんです。そして、この物価上昇は2014年の消費増税と円安政策、つまり安倍政権がもたらしたものによって起きている。これによって、2014年〜16年、3年連続で民間消費が落ち込んだのは、戦後初だそうです。17年に少し持ち直したそうなんですが、4年前の数字である2013年に届かなかった。4年前の数字に届かなかったのも戦後初なんだそうです。それぐらい、実際には戦後最大級の消費不況だというのが、本当のところなんです」
アベノミクスがもたらしたのは、戦後初の消費不況──。その上、小川議員は、人口減のこの国において、世帯数が増えていることを指摘。それも単身世帯や少人数世帯が増えている。世帯人員別1カ月間の消費支出は、1人世帯だと16万3000円、2人世帯なら25万5000円、3人世帯なら29万2000円……となっており、1人当たりの消費支出は世帯人員が少ないほど増加する。つまり、少人数世帯の増加は、「家賃や光熱費といった固定費だけでいっぱいいっぱい」の人が増えている、ということだ。そこで小川議員は「こういう状況のなかで戦後最大の消費不況ともいえる状況が起こっている。総理がよくおっしゃる総雇用者所得をマクロで見るのがいちばんいいんだとか適切だという考えは、極めて一面的で、そして浅はかで、国民一人一人の生活の実態に寄り添っていない」と批判した。