だが、今回の抗議行動をめぐっては、「LGBTの政治利用だ」「LGBTを排除するなと言いながら杉田議員を排除するのか」といった批判もネットで散見された。そこには、LGBT当事者の意見もあった。
しかし、国会議員がマイノリティを攻撃するような差別言辞を公に発表したとき、黙ったままではそれを容認してしまうことになる。当事者であろうがなかろうが、このような議員に辞職を求め、差別を許さないと声を上げていくことで社会を変えていくしかないし、事実、そうやって社会は変わってきた歴史がある。
しかも、杉田議員の「生産性」で公的支援の対象か否かを判断する考え方は、LGBTや子どもの有無にかぎらず、さまざまな理由から働くことができない人や高齢者、障がいをもつ人などにも当てはまる、誰もが当事者の問題だ。
事実、杉田議員の問題を取り上げた同じ自民党の小野田紀美参院議員は、こんなトンデモな主張を展開している。
〈憲法で定められた国民の義務は『勤労、納税、教育を受けさせること』。義務を果たしていれば権利を主張して良いと思うし、どんな生き方をしようとどんな考えを持とうと、それが犯罪でなければ個人の自由だと私は思っています〉
中学公民からやり直せとしか言いようがないが、憲法で保障された人権は生まれながらにして誰もがもつものであり、義務を果たした結果に与えられるようなものでは断じてない。しかし、これを問題視し、基本的人権を制限しようというのが自民党の方針なのだ。実際、生活保護バッシングの急先鋒となった片山さつき参院議員は〈国民が権利は天から付与される、義務は果たさなくていいと思ってしまうような天賦人権論をとるのは止めよう、というのが私たちの基本的考え方です〉とツイートしている。
働いて納税する人間にしか人権はない。「生産性」のない人間に支援は必要ない。安倍政権でどんどんと広がっていくこうした自民党の主張の恐ろしさに対して、自民党本部前に人びとは詰めかけて「NO」を突きつけたのだ。
問題は自民党の対応だ。杉田議員は安倍首相が「素晴らしい」と大絶賛して自民党に引き入れた経緯を考えると、党としての見解も出さずに無視しつづけるのだろうが、もはや国際問題にまで発展しているのだ。杉田議員の主張はもちろんのこと、与党として責任を果たさないという問題ももっとクローズアップされるべきだろう。
(編集部)
最終更新:2018.08.20 01:33