拉致問題解決の「千載一遇のチャンス」を逃したのは安倍首相のせいだ
こうした流れのなか、安倍首相は今頃になって日朝首脳会談の開催に前向きな発言をし始めているが、その本気度は不明だ。
事実、安倍首相は先月、『プライムニュース イブニング』(フジテレビ)に生出演した際、日朝会談について「ただ会って話せばいいということではない」としたうえで、「拉致問題の解決」の定義について訊かれると「拉致被害者全員の即時帰国」と明言。自ら最大限のハードルを設定し、「拉致問題が解決しないなかで経済支援をしていくことはない」と語ったのだ。本音では日朝会談に否定的だが、「ゼロ回答」を突き付けられてやむなく積極的な姿勢を見せざるをえなくなっている。そういうことではないのか。
念のため言っておくが、拉致問題の進展には日本側の直接的なアクションが求められており、日朝の首脳会談は不可欠だ。しかし、であればなおさら、安倍首相は、何が何でもイニシアチブを握らなければならなかったはずだ。実際、南北首脳会談以前、米朝が一触即発だった時期に日本が両者を仲介するチャンスは何度かあったし、南北首脳会談が決まって以降も、その流れに全面協力することで、朝鮮半島の平和構築にコミットすることはできた。
しかし、実際に安倍首相がやったことといえば、まったく逆だった。3月6日に韓国大統領府が文在寅大統領と金委員長の南北首脳会談の合意を発表した際は、菅義偉官房長官や河野太郎外相、小野寺五典防衛相らが合意について非難するコメントを発し、安倍首相も国会で「圧力を最大限に高める」と言い放った。さすがに、米国が米朝会談を決めたときには属国根性丸出しで追従したが、それでも、狂った犬のように「圧力を継続する」と吠え続けたことを忘れてはならない。
対話路線に冷や水を浴びせかけ、米韓および北朝鮮の足を引っ張り続けた結果、交渉から“蚊帳の外”にされたのは、誰の目にも明らかな失政。にもかかわらず厚顔無恥なことに、トランプ大統領に中身が何もない「提起」を“してもらった”だけでヘコヘコし、国内向けには「私が言ったことをしっかり伝えてもらった」と空疎なアピールを繰り返す。まさに政治的パフォーマンス以外の何物でもない。
何度でも繰り返すが、今回の米朝会談では拉致問題は微動だにしなかった。このままでは、たとえ日朝会談にこぎつけたとして、単に安倍首相がパフォーマンスを重ねるだけで終わるだろう。そうしている間にも、拉致被害者と家族の高齢化は進んでいく。この宰相に拉致問題をまかせておいていいのか。いま、あらためて問われなくてはならない。
(編集部)
最終更新:2018.06.13 07:59