岩田明子だけでなく、櫻井よしこも「良い独裁がある」と
ドゥテルテ大統領といえば、自分に向けられた批判に対しては「でたらめ」「フェイクニュース」と攻撃し、さらに今年3月には政権批判をおこなってきたネットメディアの最高経営責任者を脱税の疑いがあると発表するなどメディア圧力を強めている。こうしたドゥテルテ大統領の政治手法は「トランプ大統領を真似ている」と言われるが、そのトランプの右腕だったスティーブン・バノン氏が「安倍総理は“トランプ以前のトランプ”(Trump before Trump)ではないかと思っている」と評したように、安倍首相はもはや世界でも独裁的なリーダーの代表格でもあるのだ。
国会議論という正当な手続きを軽視して強行採決を連発するなどの議会制民主主義を否定する態度はもちろん、メディアへの報道圧力、そして権限を首相に集中させる緊急事態条項を含む憲法改正など、安倍首相が目指す道が「独裁」であることはさんざん指摘されてきたことだが、森友・加計学園問題によって、政治を私物化の果てに公文書まで改ざんしてしまう恐ろしい本質が露呈し、「独裁」ぶりはより広まった。
そうした結果、なんとしても安倍首相を守りたい岩田氏は、ついに「独裁者でも国益を高めるリーダーならば成功」などというトンデモ論で擁護する手に出たのだろう。
だが、この安倍首相を念頭に置いた“良い独裁がある”論は、岩田記者のオリジナルではない。じつは、現在発売中の「WiLL」(ワック)に掲載されている櫻井よしこ氏と日本会議会長の田久保忠衛氏の対談では、「日米首脳会談以後 危機の宰相は独裁でいい」と題し、岩田氏と同じように「独裁」肯定論を展開しているからだ。
たとえば、対談のなかで櫻井氏は、中国やロシア、北朝鮮、アメリカなどの国を踏まえて「世界の中で、物事を決める国がほとんど独裁国家になりつつあります」と言い、「片や非常に速いスピードで決定が下され物事が動いている一方、日本は何も決められない国になってしまった」と嘆息すると、これを受けて田久保氏は「エジプト、ハンガリー、ポーランド……民主主義を通じて全体主義に向かう国が増えている」「独裁に向かう国と民主主義を堅持する国の対立軸が世界の中心となるでしょう。日本も、この新しい流れに乗り遅れてはいけません」と主張している。
まったく何を言っているのやら。「何も決められない国になってしまった」って、安倍政権は特定秘密保護法、安保法制、共謀罪……と反対意見に一切耳を貸すことなくまともな国会議論もしないままいくつもの法案をゴリ押しで決めてきたではないか。まさに日本はいま「民主主義を通じて全体主義に向かう」危機にある。それでもまだ足りないのか、櫻井氏と田久保氏は、目の敵にしてきた北朝鮮の名まで出して、“日本も独裁に舵を切るべき”などと言い出す。そして最後は、櫻井氏がこうまとめるのである。