『池上彰緊急スペシャル」で池上インタビューに応える蓮池薫氏
朝鮮半島の平和に向けて歴史的な一歩となった南北首脳会談。2〜3週間のうちには米朝会談も行われる予定だが、日本もこの対話の流れを全面的に支持し、積極的にコミットしていく必要があるだろう。なぜならこれは朝鮮半島の非核化や朝鮮戦争終結につながるだけでなく、日本人拉致問題の解決にも大きな突破口となる可能性があるからだ。北朝鮮との対話は、政治的な立場とは関係なく、プラグマティックな意味で最大のチャンスなのである。
ところが、日本のメディアは相変わらず「北朝鮮は日本の金を狙っているだけ」「北朝鮮に騙されるな」と連呼するばかり。安倍政権も、表向きは歓迎コメントを出したが、現実には強硬対決路線をまったく変えようとしていない。
そんななか、テレビで勇気のある発言をしたのが、拉致被害者である蓮池薫氏だった。
4月29日に放送された『池上彰緊急スペシャル 激動の朝鮮半島!どうなる拉致問題!平成の宿題 徹底解説』(フジテレビ)のインタビューで、池上氏から「日本にいる私たちに何ができると思いますか」と聞かれた蓮池薫氏は、こう踏み込んだのだ。
「国民のみなさんにお願いしたいのはですね、『そもそも拉致というのは国家犯罪でそこに見返りとかそういうものはありえない』というのは当然、正論だと思いますが、しかし『拉致問題を解決すれば国交正常化』というこのパターンを受け入れて、支持していただきたい。
強気に行って、追い込んで、降伏させるというには時間がかかるし、なかなか無理だろうと、いま当面は。だから、そういう日本政府が柔軟な政策に基づいて解決しようとしたときに、積極的に支持していただければ、政府は動きやすいでしょうし、そうすれば解決への道が大きく開けてくるのかなと。まさにそのタイミングはいま近づいてきているのかなと、こう思います」
言葉こそ慎重に選んでいるが、これは、いままでの日本政府の圧力一辺倒に疑義を呈し、その転換を国民世論に訴えかけたものに他ならない。
拉致被害者である蓮池薫氏自身が、ここまで踏み込んだ発言をするというのは異例のことだ。薫氏の兄である元「家族会」副代表・蓮池透氏は近年、安倍首相らによる拉致問題の政治利用と圧力一辺倒を真っ向から批判するようになったが、薫氏はこれまで公の場で、拉致問題に関する日本政府の方針について具体的な言及をすることはほとんどなかった。
自身の立場や、北朝鮮に対する国民感情、そしてこれまでの安倍首相による圧力を考慮して沈黙せざるを得なかったのだ。