★特大ブーメラン賞
加計問題で「朝日は加戸・八田証言を一切報じなかった」とフェイク攻撃した安倍晋三のフェイク
加計学園問題をめぐり、次々と“加計ありき”の証拠や告発が出てくるなか、安倍応援団がわめきたていたデマが「閉会中審査での加戸守行・前愛媛県知事や八田達夫・国家戦略特区ワーキンググループ座長の発言で潔白が明らかになった!」。
これ自体、本サイトで何度も取り上げてきたように、まったくトンチンカンな話(たとえば加戸氏が知事を務めたのは2010年までで、そもそも第二次安倍政権での特区指定の行政プロセスにタッチする機会もなければ内実を知る立場にもない)なのだが、あろうことか安倍首相までが、ネトウヨによる「加戸・八田証言が隠されている!」なる大合唱に乗じて、朝日新聞をターゲットに公然と批判をまくし立てた。
「まず、朝日新聞は、先ほど申しあげた八田さんの(国会での証言の)報道もしておられない」「加戸さんについては、(国会で)証言された次の日には全くしておられない」「これはぜひ、国民の皆さん、新聞をよくファクトチェックしていただきたいと思います」(10月8日党首討論会)
この安倍発言を、“安倍首相に最も近い記者”のひとりである産経新聞の阿比留瑠比論説委員が紙上(10月9日付)で肯定的に引用し、〈朝日がいかに「(首相官邸サイドに)行政がゆがめられた」との前川喜平・前文部科学事務次官の言葉を偏重し、一方で前川氏に反論した加戸氏らの証言は軽視してきたかはもはや周知の事実である〉などと攻撃した。また産経は、党首討論会当日のweb版でも〈産経新聞は7月12日付朝刊で、朝日新聞と毎日新聞が加戸氏の発言を記事で一切取り上げていないことを報じていた〉などと胸を張った。
が、この「朝日は加戸・八田証言を全然報じていない」なる話、まったくの嘘っぱちである。
事実、紙面を普通に読めば自明だが、朝日新聞は加戸氏の発言を閉会中審査の翌日にあたる7月11日・25日付朝刊で報じており、「「愛媛は12年間加計ありき」加戸氏」と見出しにまでしていた(11日付)。また八田氏については、朝日は反論記事(10月8日デジタル版)のなかで〈7月25日付の朝刊で獣医学部新設の決定プロセスを「一点の曇りもない」とした答弁や、「不公平な行政が正された」とする見解を掲載〉〈また、こうした国会での発言も含め、八田氏に単独取材した今年3月下旬以降に10回以上、八田氏の発言や内閣府のホームページで公表された見解などを掲載してきた〉と説明している。
実際、本サイトもデータベースを使って調べてみたが、朝日は今年3月から8月までの間に、少なくとも10の記事で、八田氏の発言等をカッコで引用するなどのかたちで報じていた(立場を紹介するようなものも含めば10回を超える)。
毎日新聞についても同様で、〈朝日新聞と毎日新聞が加戸氏の発言を記事で一切取り上げていない〉(産経)というのは明確に事実と異なる。
いやはや、安倍首相が平気で嘘をつくのは前から知っていたが、これで被害者ヅラしながら「国民はファクトチェックをしてほしい」とのたまっているのだから呆れるではないか。しかも、このフェイクニュースには笑えるオチまでついている。
実は、産経のほうが朝日よりも、八田氏の発言を報じていないのだ。
事実、八田氏が与党側の参考人として証言したのは7月24日の閉会中審査だが、産経新聞はその翌日朝刊で八田証言を一切報じなかった。朝日も含む他の全国紙は報じたにもかかわらず、である。ちなみに産経が八田氏の国会証言を初めて報じたのは実に2週間後の8月7日付。しかも3〜8月の間、八田氏の発言等を引用するかたちで報じた記事は5つしかなかった。実に朝日の半分である。
安倍首相はこう呼びかけるべきだった。「ぜひ、国民のみなさん、私に好意的な産経新聞をよくファクトチェックしていただきたい」……トホホ。