橋下徹を「人格障害」と評した論評も裁判所で正当性が認められた
これに対し、橋下氏が名誉毀損だとして新潮社と野田氏を提訴、2015年9月の一審、大阪地裁での判決では、新潮社などに110万円の支払いを命じる判決が出ていた。しかし新潮社が控訴した結果、2016年4月21日、大阪高裁は記事内容を「野田氏らが真実と信じる理由があった」として橋下氏の請求を棄却。今年2月の最高裁でも橋下氏の上告を退け、敗訴が確定した。
これは、為政者への精神分析や診療せず診断することに公共性を認め、公人に対する「表現の自由」が尊重された結果と言えるだろう。
じつはアメリカにおいては、1964年にバリー・ゴールドウォーター大統領候補に対して雑誌がメンタル特集を組んだことが問題となり、裁判でも雑誌側が敗訴した。こうしたことを受けて、アメリカ精神医学会は「自ら診療していない公人の精神状態について議論することは非倫理的」としてこれを禁止する通称「ゴールドウォーター・ルール」を設けた。
しかし、学会にそうした倫理規定がありながらも、トランプ大統領に対してアメリカの精神科医たちはアクションを起こした。それは、トランプが大統領でいることへの危険性の高さからだ。
前述の渡辺由佳里氏のコラムによると、トランプの精神分析をおこなった『The Dangerous Case of Donald Trump』にも寄稿しているニューヨーク大学の精神科医ジェームズ・ギリガン教授は、「1930年代にドイツ精神医学会がおかした過ちを繰り返さないようにしよう」と呼びかけ、こう述べているという。
「ドナルド・トランプが繰り返し暴力の威嚇をし、自分の暴力を自慢しているのに対して私たちが沈黙を守るとしたら、彼のことをあたかも『正常な』大統領、あるいは『正常な』政治的指導者だとして扱う危険でナイーブな失敗に加担し、可能にすることになる」
かたや、日米同盟という名のもとで隷属状態にあるこの国では、トランプ大統領への危惧を述べただけで、安倍首相の崇拝者から「反日コメンテーター」と呼ばれ、政権批判さえ「安倍憎しは精神的障害」とバッシングを受ける。そして、危険極まりない大統領と首相の蜜月を言祝ぎ、お祭りムードをつくり出すメディアが、戦争に進む道へと後押ししている。
こんな現状では、安倍政権の批判のみならず、トランプ大統領の差別的言辞に疑義を呈しただけで「非国民」だと非難を浴びる、そんな日がくるのもそう遠くはないのかもしれない。
(編集部)
最終更新:2017.11.06 09:09