『パーフェクト・レボリューション』は社会がもつ差別と偏見に光を当てた
『パーフェクト・レボリューション』の映画パンフレットに掲載されているリリー・フランキーとの対談で熊篠氏はこのように語っている。
「夏の黄色いTシャツの番組みたいに、障害者と向き合う時はどうしてもかしこまらないといけないような風潮がありますけど、そんな必要はないんだよって」
健常者の社会は、障がい者もほかの人たちと同じように誰かを好きになることもあるし性欲もあるという当たり前の事実から、知らず知らずのうちに目をそらしてきた。それは「差別」に他ならない。「夏の黄色いTシャツの番組」だって、障がい者が何かに打ち込む姿は映しても、その人が誰かに恋焦がれたりする姿を映したり、ましてや、障がい者が下ネタを含む下世話なジョークを飛ばしたりする姿を放送したことがあっただろうか。
『パーフェクト・レボリューション』の主人公クマは、下品な冗談は飛ばすし、「手も足も出ない」といった笑っていいのかどうか迷うブラックユーモアも言うし、恋に落ちた相手と向き合いながら笑ったり悩んだりするし、もちろんセックスだってする。こうした主人公のキャラクターは実際の熊篠氏のキャラクターそのもので、作品のなかでは「そんな障がい者いないよ」と観客に思われないように、むしろオブラートに包んですらいるらしい。
『パーフェクト・レボリューション』という映画、そして、リリー・フランキーと熊篠氏の言葉は、いまだ「タブーにすらなっていない」障がい者の性という問題に光を当てるものだ。これから、この問題について議論が始まっていくことが求められている。
(編集部)
最終更新:2017.10.05 09:39