官邸の注意喚起は、東京新聞・望月記者の口封じが目的
これはまったくおかしい。たしかに、文科省の設置審が獣医学部新設を認可保留としたことを公表したのは、この会見がおこなわれた日の午後だ。しかし、設置審が開かれたのは8月9日であり、同じ日にNHKが〈実習計画などが不十分で課題があるとして、認可の判断を保留する方針が決まり、今月末に予定されていた大臣への答申は延期される見通し〉と報道。NHKのみならず新聞・テレビは一斉に同様の報道をおこなっている。この官邸の注意喚起を嬉々として伝えている産経だって、8月10日付朝刊一面で「設置審、加計獣医学部の判断保留」と報道していた。政府もこの間これらの報道を否定していない。
つまり、設置審の判断はすでに広く事実として報じられてきたのに、官邸は25日午前の会見の段階では文科省がまだ正式に公表していなかったことだけをもって「未確定な事実や単なる推測に基づく質疑応答」などと非難しているのだ。
こんなバカな話があるだろうか。設置審が認可保留としたことは「未確定な事実」でも「単なる憶測」でもまったくない。いや、官邸の主張を認めれば、それが事実でも正式発表があるまでは質問できないということになる。
これは明白に「報道の自由」に対する圧力であり、断固として許されるものではない。全メディアは官邸に抗議をおこなうべきだし、無批判に官邸情報そのままに伝える産経新聞には恥を知れと言うほかない。
いや、そもそも「未確定な事実」や「単なる憶測」と言って質問を封じるということ自体がおかしい。この官邸の言い分がまかり通れば、独自で掴んだ情報も「未確定な事実」や「単なる憶測」とされ、政府が認めていることしか追及できないということになってしまうからだ。実際、望月記者が登場するまえの、菅官房長官と官邸記者クラブの会見はそうだった。
しかも、今回の官邸の行動がもっとも悪質なのは、東京新聞の望月記者をターゲットにし、望月記者を黙らせる目的なのがあきらかであることだ。