実際、安倍政権はこれまでも年金の運用を自分たちのために“利用”してきた前科がある。アベノミクスの成長戦略として安倍首相は年金運用の変更を掲げ、2014年には国内・外国株式の運用比率をそれぞれ12%から25%に引き上げて株式運用枠を20兆円まで増やしたが、そこでおこなわれたのは、年金積立金を株式市場に投入することで株価を吊り上げるという見せかけだけのアベノミクスの「演出」だった。そして、前述したように2015年度には約5兆3000億円の運用損を出し、わずか15カ月でじつに10.5兆円もの国民の年金を溶かしてしまったのだ。
そして、そのツケを安倍政権はよりにもよって国民に押し付けた。年金支給額が国民年金で年間約4万円減、厚生年金ではなんと年間約14.2万円も減る「年金カット法案」を強行採決で成立させてしまったのである。
ちなみに、安倍首相は「消えた年金」問題が発覚した第一次政権時、「最後のひとりにいたるまでチェックし、年金はすべてお支払いすると約束する」と言ったが、何の約束も果たさないまま退陣。結局、持ち主がわからない年金記録は約2000万件も残っている(15年5月時点)。さらには、安倍首相は「消えた年金」問題について、2008年1月に開かれたマスコミとの懇談会で「年金ってある程度、自分で責任を持って自分で状況を把握しないといけない。何でも政府、政府でもないだろ」と語ったという。
年金を運用の改悪によってパーにしてしまった責任など微塵もなく、挙げ句の果てに、トランプへの貢ぎのために年金を使う──。国民の保険料を自分の財布と勘違いしたこの男に年金を任せていること、その事実こそがわたしたちにとって最大の「老後の心配」と言うべきだろう。
(編集部)
最終更新:2017.11.16 12:00