小説、マンガ、ビジネス、週刊誌…本と雑誌のニュース/リテラ

menu

佐藤優と北原みのりが安倍首相の慰安婦問題の対応を批判!「慰安婦は歴史問題じゃない、男の姿勢が問われている」

 こうした男性たちの態度は、じつは韓国でも見られるという。佐藤氏は「韓国のなかでも「あれは戦時中の売春婦だった」という言説が出てくると、よく言った、これぞ勇気ある言説だ、とそこに皆飛びついていくわけです」と言い、北原氏も、当事者である被害者女性や支援団体に対して「「この売春婦が」「韓国の恥」というような声が韓国内からもあった」と述べている。

 そうしたなかで韓国の支援団体は“「慰安婦」問題は「女性の人権」問題である”と定義し、国際的世論をつくっていったのだという。──日本において「慰安婦」問題が語られるとき置き去りにされているのが、この「女性の人権」という視点、そして「性暴力は絶対に許されないもの」という考えだろう。そうした視座がないがために、今回の少女像設置に対して、安倍首相をはじめ、テレビに出てコメントする文化人や芸能人も「韓国はけしからん」「日韓合意を守れ」などとカネで解決できる問題として扱おうとするのである。

 北原氏は、韓国の被害者女性たちが日本に求めてきたものを「一貫して、加害者の真摯な謝罪と、賠償。そして絶対に今後繰り返さないという日本社会での教育」と語る。日韓合意はそうした当事者の声を無視したものだが、安倍首相が「「少女像をどかしてね」など、被害者側にも要求をつきつける」(北原氏)という姿勢を貫くいま、あらためて確認しなければならないのは「和解」とは何か、ということだ。

〈北原 忘れないけども許すというのが、本当の「和解」ですよね。
 佐藤 そうです、それが和解です。ナチスの戦時犯罪をめぐって、ユダヤ人、ポーランド人はドイツ人と和解しても絶対に忘れない。
 北原 忘れないけど許すということを、日本軍「慰安婦」の被害者は求めてきたと思うんです。
 佐藤 和解は双方向的な行為だけど、謝罪は一方的な行為ですからね。謝罪をしても受け入れてもらえるかどうかはわからないんですよ。
 北原 受け入れる側が決めることですよね。
 佐藤 その通りです。だから、世界において「この謝罪をあなたは受け入れてくれるよね? これを受け入れてくれるんだから、この先は大丈夫だよね?」という形は、謝罪じゃないんです〉

 この佐藤氏と北原氏による『性と国家』では「慰安婦」問題にとどまらず、沖縄の構造化された差別の問題や、女性に対する憎悪を募らせる男性の被害者意識の高まりという“ファシズム以下の女性蔑視社会”についてなど、多岐にわたる切り口で今日的な問題をめぐる対話が繰り広げられている。そして、本書を通してよくわかるのは、日本軍による「慰安婦」問題と、現在の日本における女性の性の問題は地続きにあるということだ。

 植民地支配下にあった国の女性たちにふるった性暴力を「女の自由意志だ」「強制ではない」と言うことと、女性への性暴力に対して被害者を貶めるような主張が当たり前のように飛び出す現在──。この歪な状況が「異常だ」と言われるようになる日は、いったいいつになるのだろうか。
(田岡 尼)

最終更新:2017.11.15 06:18

関連記事

編集部おすすめ

話題の記事

人気記事ランキング

カテゴリ別に読む読みで探す

話題のキーワード

リテラをフォローする

フォローすると、タイムラインで
リテラの最新記事が確認できます。

プッシュ通知を受け取る 通知を有効にする 通知を停止する