「これ、リベンジポルノよりもひどい人権侵害だと思うんですけど、規制する立法がないということで、なかなか取り締まり、刑事的な処罰というのも難しい状況なんですね。そういった面で私たちとしても、効果的な規制立法を新たにつくってほしいと訴えているところです」
たしかに、AV出演強要は早急に解決すべき問題だが、刑事的な処罰、規制立法が必要というのは短絡的すぎないだろうか。前述のように、今、AV業界は自主的にこの問題を解決すべく動き始めている、にもかかわらず、当局の法的規制を求めるのは、権力に新たな利権を与えるだけではないのか。
実際、このAV強要問題を、NHKはじめ新聞やテレビが取り上げ始めた裏には、警察や厚労省の存在があるのではないかともいわれている。
前述の通り、「AV出演強要」をめぐる議論が現在のように盛り上がり始めたのは、6月2日に内閣府が「AV出演強要についての実態把握に努める」という答弁書を閣議決定。その9日後に大手AVプロダクションであるマークスジャパンの元社長ら3人が労働者派遣法違反容疑で逮捕されたのがきっかけだった。
実はこの前後から、厚生労働省、警察がやたらマスコミにAV強要問題を取り組んでほしいという意向をPRしていたという。
「厚労省でもなんらかの規制が必要、対策を開始したいとのブリーフィングがあったようですし、警視庁の生活安全部の幹部は、AV出演強要を摘発していくと息巻いていました。その数日後に、マークスジャパンの摘発があったわけですが、警視庁はまだまだやると言っています。大手新聞やNHKまでこのAV出演強要問題を取り上げ始めたのは、その空気に敏感に反応しているからです」(全国紙社会部記者)
しかも、この問題にやたら熱心な厚労省と警視庁の姿勢の裏には、これを機に新たなAV業界の監督団体をつくって、自分たちの利権にしたいという意図があるのではないか、といわれている。実際、過去には、警察がメーカー90社以上が加盟していた審査機関最大手の日本ビデオ倫理協会(ビデ倫)をつくらせ、そこを警察OBの天下り団体、たとえば事務局長のポジションを天下りポストにしてきた実態もある。
いずれにしても、これから先、マスコミ、政府、警察の三者が一体となったこの出演強要問題追及の動きはさらに激しくなるだろう。特に警視庁は複数のAV女優にアプローチして、出演強要を告発させるべく働きかけているというから、今後、次々とAVプロダクション関係者が逮捕されるという事態も起きるかもしれない。