深刻な社会問題を前にしても「女性は母性」とは呆れるが、同様に山谷氏は、働く女性のみならず、結婚制度から外れた女性や望まない妊娠に対しても牙をむく。
「結婚もせずに母親になる女性を未婚の母ではなくシングルマザーと呼ぶ。あたかもおすすめするかのように(教科書で)書く。これは問題ではないか」(05年3月参院予算委員会での発言)
「教科書では中絶を女性の自己決定権、基本的人権という言葉で正当化するのです。なんという浅はかなエゴイズムなのだろうか」(「正論」14年8月号/産経新聞社)
だが、山谷氏の最大の“罪”は、彼女が繰り広げたジェンダフリーバッシングにあるだろう。
山谷氏は安倍晋三氏が座長の「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」の事務局長を務め、当時、一部の公立学校で行われていたオープンな性教育を徹底批判。その結果、現在は若年層の無知からくる望まない妊娠や性感染症が増加の一途をたどるという悲惨な状況におちいっているが、当の山谷氏は「(性教育は)結婚してから」と明言してきた。
しかし、その山谷氏の親族が、先日、女性への暴行容疑で逮捕された。東大サークルによる女性へのわいせつ事件の実行者のひとりこそ、山谷氏の“従兄弟の子”だったのだ。
この東大サークルわいせつ事件では、女性を泥酔させた上でわいせつ行為や殴る蹴るの暴行を働き、さらにはカップラーメンの汁をかけたり、女性の局部にドライヤーで熱風をかけるなどという異常な行動に出たとされている。女性の尊厳を無視し、もののように扱う──これは山谷氏が政治家として、性について深く考える教育の機会を奪ってきた、そのひとつの弊害ではないのか。選挙への立候補以前に、山谷氏はこの痛ましい事件について、きちんと自身の考えを語るべきだろう。
★子どもに「教育勅語」を暗唱させろ!? 改憲派の“戦前”教育思想
中山成彬(日本のこころを大切にする党/比例代表)
山谷氏と同様に、ジェンダーフリー教育に異を唱えていたのが中山成彬氏。中山氏は第二次小泉改造内閣で文科相を務めたが、その際も、十八番の日教組批判と絡めてジェンダーフリー教育をバッシング。そして、山谷氏と同じように、“子育ては母の務め”と主張していた。
たとえば、文科相として登場した「諸君!」(文藝春秋/廃刊)2005年5月号の細川珠生氏との対談では、細川氏から「どうしても働かなくてはいけない人のためには必要ですが、そうでもない親の都合のためだけに国が率先して保育園をどんどん作っているのは非常に疑問」と投げかけられ、こう返答している。
「いろんな研究で明らかなように、小さい頃はお母さんが赤ちゃんを抱っこしながら本を読み聞かせたり、いい音楽を聴かせたりするのがいいそうです。余裕のある人はできるだけ、いや、なくてもできるだけ時間を取って子供と接触することで、ちゃんとした子が育つのではないでしょうか」
質問も質問だが、この回答だと“保育園に行かせるより母親が家で読み聞かせをしたほうがいい”と答えているようなものではないか。