救う会:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会ホームページより
拉致問題というのはどうしてこう政治にからめとられてしまうのだろう。「週刊文春」(文藝春秋)6月16日号に、横田滋・早紀江夫妻と拉致被害者・めぐみさんの娘、キム・ウンギョンさんの写真が掲載されたことが大きな波紋を投げかけている。
これは14年3月、横田夫妻がモンゴル・ウランバードルで初めてウンギョンさんと面会し、同行した夫や生後10カ月のひ孫と過ごした際に撮られた6枚の写真だ。
また、同誌には参議院議員の有田芳生氏の執筆した特集記事も掲載されていた。記事には、横田夫妻とウンギョンさんとの会話の様子や、「(孫娘と)いまでも会いたい気持ちは強いですよ」といった横田夫妻の思いが記されていた。日朝交渉が再開する目処もなく、夫妻が拉致問題の風化を恐れていることことや、孫娘に会えた喜びを伝えた写真と特集記事。
ところが、である。「週刊文春」発売同日、「救う会」(北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会)のHPにこんな“声明”が掲載されたのだ。
〈皆様へ
この度の週刊文春に掲載の孫たちとの写真は、横田家から提出してお願いをしたものではありません。
有田氏が持参なさり、「掲載する写真はこれです」と出されたものです。
私達は、孫との対面時、孫から写真を外に出さないでほしいと約束していましたので、横田家からは、何処へも、一枚も出しておりませんし、今後も出しませんので、よろしく御理解頂きます様お願い致します。
全て、掲載や、文章、等全て、私共から依頼した事でなく、有田氏から寄せられた事をご理解頂きます様お願い致します。
6月8日 横田滋 早紀江 〉
写真は横田夫妻が提供したものではなく、有田氏が勝手に持参したもの、記事も有田氏が勝手に書いた。この文面からはそう受けとれる。
実際、これが公開されるや「有田は横田夫妻を騙した裏切り者」「北朝鮮のスパイ」「写真は北朝鮮からもらったのでは?」「参院選を睨んでの売名行為」「落選させろ」「有田芳生は人間のクズ」といった有田氏に対する非難、バッシングが巻き起こった。
たんなるバッシングだけではない。官邸周辺から「有田は横田夫妻と文春の両方を騙して、記事をでっちあげた」とする詳細な情報も流れてきた。
しかし、本当にこの「週刊文春」の記事は横田夫妻の明確な合意がないまま掲載されたものなのか。