「交渉は妥結した結果がすべてだ。結果に至る過程の協議が、すぐ表に出るようなら、外交交渉はそもそも成立しない」
まあ、よくも言ったものだ。安倍首相の答弁でいえば、西川氏の本の出版は外交交渉なんて成立しない、とんでもない暴挙ということになるだろう。
しかも、このやり方が問題なのは、交渉過程が国家機密になっているため、本ではいくらでも事実関係を歪曲、捏造して、情報を操作できることだ。実際、西川氏の本は、かなりの部分で、政府、与党に都合よく情報を書き換えられているという。
まさに、国民をなめているとしか思えない背信行為。しかもこれ、安倍首相は「知らなかった」では済まされない。というのも、西川氏のこの本の出版を、安倍首相は確実に知っていたからだ。
じつは同書は当初、西川氏が4月の政治資金パーティーで配布するべく、4月10日に発売する予定だったが、3月末にテレビ東京が同書の内容が交渉過程にかなり踏み込んだものであることを報道。この取材に対し、与党側が「TPP協定の承認と関連法案の成立に万全を期すため、本の発売も遅らせたい」と考えていることも報じていた。そして本の発売日は4月から5月に延期されていたのだ。この問題を、安倍首相が知らなかったわけがない。
ようするに、政権側はTPP暴露本の出版事実を知りながら、一方で求められていた情報開示には黒塗り資料を出すという、国民をバカにするにも程がある行動に出ていたのだ。
「むしろ、最初から、政府と西川氏の本の出版は連動していたと考えるべきでしょう。政府としては、“国家機密”と称してすべての情報を隠し、一方で、与党の責任者に“内幕”と称して、自分たちに都合のいい情報を出させて、国民を誘導する。そういう作戦だったんじゃないでしょうか。出版元も政権べったりの読売新聞社系の中央公論新社ですしね」(全国紙政治部記者)
そもそも今回の西川委員長による出版行為は、議員辞職に値するものだが、それを黙認していた安倍首相の責任も問われるべきだろう。
(編集部)
最終更新:2017.11.24 09:45