これは陰謀論ではない。実はこれまでも、公明党が自民党の政策に完全に反対したり、政権離脱の動きを見せたときは、必ず、自民党右派、もしくは政権に近いメディアが学会と公明党の政教分離問題をちらつかせて、プレッシャーをかけてきた。
たとえば、2014年の集団的自衛権行使容認の閣議決定にあたっては、安倍首相のブレーンのひとりである飯島勲内閣官房参与が、アメリカでの講演で「法制局の発言、答弁が一気に変われば、(公明党と学会の)『政教一致』が出てきてもおかしくない」と発言。公明党はこれを境に態度を一変させ、集団的自衛権容認、安保法制賛成に傾いた。
そして、今回も同じように、フジが政権の意図を先取りして、この企画を立ち上げ、大々的に報道したという見方が、永田町では一般的になっているのだ。
「フジの日枝久会長と安倍首相は毎年、一緒に夏休みをすごすほどの関係で、同局の報道局は官邸の宣伝装置のような存在です。官邸に命じられたかどうかはわかりませんが、少なくとも、こんな内容の番組を、官邸の許可なしにやれるとは思えない」(大手紙政治部記者)
もっといえば、今回の番組に関しては、公明党や学会の上層部も了承済みの企画ではないか、との見方もある。
本サイトで既報のとおり、学会内の派閥闘争では、官邸と強力なパイプを持つ東日本の谷川佳樹氏と、護憲の傾向が強い大阪の正木正明氏との間で次期会長レースが展開されているとみられていたが、昨年の幹部人事では正木氏は理事長の座から退き、会長の諮問機関にすぎない「参議会」副議長に異動になった。表向きは正木氏が「体調不良」を理由に理事長を辞任した形になっているが、事実上の左遷ではないかともいわれている。
こうしたことから、すでに、公明党=創価学会の上層部は平和路線を捨て、憲法改正についても、自民党と共同歩調をとることを決めているとの見方が強い。
しかし、上層部はそうでも、婦人部をはじめとする多くの信者は今も、池田大作の教えである護憲と平和主義を強く訴えている。その一端がかいまみえたのが、昨夏の学会員による反安保デモや反対署名だった。
そこで、官邸と公明党、学会上層部が一体化して、学会員に向けてメッセージを送ったのではないか、というのだ。
実際、『みんなのニュース』の放送でも、学会上層部側の意図がうかがえる場面があった。「公明党の政策と意見の食い違いがあった場合は、公明党以外に投票することもありえるか?」と問われた学会の岡部副会長はこう答えたのだ。