アイドルを人間である前に商品と見なすような、恐るべき人権無視の判決ではないか。この小島裁判官による判決に対しては、上野千鶴子氏もツイッターでこう述べている。
〈「恋愛の自由」は基本的人権ではないのか。アイドル「交際禁止」契約違反に損害賠償の判決。契約違反以前に「交際禁止」を契約に入れること自体が公序良俗に反するだろう。裁判所の見識を疑う。〉
しかも、こうした基本的人権軽視の感覚は昨年の判決だけではない。今回の判決にも、こんな一文が含まれているのだ。
〈ファンはアイドルに清廉性を求めるため、交際禁止はマネジメント側の立場では一定の合理性がある〉
裁判所はアイドルの清廉性を求めるファンの願望と基本的人権のどちらを優先すべきなのか本当にわかっているのだろうか。もしかしたら、裁判所は“処女厨”の集団か?と疑いたくなるが、いずれにしても、これは、アイドルの恋愛が事務所への損害賠償を発生させる可能性が完全に排除されたわけではないということだろう。
昨年の判決とあわせて考えると、アイドルの交際発覚によりグループを解散させざるを得ない、など芸能事務所の経済活動に損害を与えたと見なされれば、賠償が命じられる可能性も残っている。グループの解散は、当然個々のアイドルではなく、事務所の意向によって決められるものなのだから、いわば事務所の胸先三寸でアイドルに賠償を求めることができるということだ。
アイドルの契約に「恋愛禁止」などという奴隷契約のような条項を平気で入れて、それを破った途端にスラップ訴訟とも言えるような訴訟を起こす芸能事務所と、それに理解を示す裁判所。この国はいったい民主主義国家なのか、と疑いたくなる。
しかし、こうした状況には、当のアイドルたちからも少しずつ、異論が出てきている。指原も65万円の賠償命令が出た際『ワイドナショー』で「恋愛禁止ってやめません?」と提案していた。
大好きなアイドルのためにも、ファンがまず、“処女厨”から卒業して、「恋愛禁止反対運動」を展開したらどうだろうか。
(高幡南平)
最終更新:2016.08.05 05:55