家庭的に恵まれなかったとはいえ、まじめな優等生が集団レイプによって、その1週間後には父親と同じような年齢の男の愛人になる。その激変は驚くばかりだが、葉子はそんな生活のなか、摂食障害になり、リストカットを繰り返した。そして両親が反対するなか、早田から貰った計400万円ほどのお金を元手に葉子は東京へ進学する。上京直後整形し、おっぱいパブやヘルスで働き始める。
「結局、男はセックスしたいのだ。
女の身体の穴という穴に排泄をしたいだけなのだ(略)。
そのころの私にはすでに、男性の経済力と自分の身体を天秤にかける癖が出来上がってしまった」
ここまでの葉子の軌跡には驚くが、本書では葉子が愛人になり、そして風俗で働く明確な理由は記されていない。ただレイプされた以降、地元での生活が忌まわしいものになったことは想像に難くない。
「東京で小さくでもいいからこのお金(400万円)を頭金にマンションを買って、誰にも罵倒されたり、人格を否定されたりすることなく、静かに暮らすという目標を立てた。地元の学校教師か看護師になりたいという夢はとっくに葬った。もう山も田んぼも牛も見たくなかった」
そんな葉子だったがその後ある男性と知り合い、結婚する。しかし籠の中の鳥のような生活に疑問を感じ始める。
「結婚とは、なんなのだろう? 私と雪村さん(夫)が交換したものは何だろう?
結局は、お金と肉体の交換でしかないのではないだろうか?
だとしたら、結婚という形がありで風俗という形がだめなのは、なぜ?」
こうして夫に内緒で再び風俗に戻ったり、自宅に引きこもったり、またジム通いやボランティアをしたりの試行錯誤を繰り返した葉子は看護師資格を取ることを決心、一人東北で生活をしながら看護師資格を取得する。
こうした葉子のレイプの後の人生が語られるが、しかしそこにはどうしても精神の不安定さ、あやうさが随所に見て取れる。やさしかった夫が次第に変化していくことに嫌悪を表し、彼から独り立ちする形で看護学校に行きながら、しかし現在でも離婚をするわけでもない。看護師資格を取ってからは、東京で看護師をしながら、家では主婦業をこなし、さらにSM嬢として働いてもいるのだ。