〈三年前の二月十一日、私は同志の方々と共に、天志塾を創塾しました。創立当初の天志塾は、安倍晋三氏の総理大臣再登板の為の民間有志運動として始まりましたが、安倍氏が総理就任の後は、日本の国柄、文化、政治を幅広く学び、考究する場に、その意味を徐々に変へながら、ささやかながら活動を続けてきました。〉(2015年2月11日のブログより)
実際、この塾の活動内容を見てみると、安倍絡みのイベントばかりが目立つ。2012年に開かれた第一回目の月例勉強会のテーマは「僕は、安倍晋三を再び総理にする!」というもので、ゲストは昭恵夫人。自民党総裁選直前の同年9月には、安倍晋三本人も出席して「安倍晋三総裁選決起集会」への参加を呼びかけも行っている。
ウェブマガジン「トレード・トレード」に掲載されたインタビューのよると、小川氏が安倍氏を首相にしようと思ったきっかけは、3・11直後に受けた「天の啓示」だったという。
〈これは天の啓示みたいなものがあったのです。(中略)実際にあの大地震が起こり、原発の事故があって、人がいない、灯りも点いていない新宿で会議を開いていた時、ふと次期首相は安倍晋三氏が適切であるという啓示が降りてきたのです。〉(小松成美の一語一会 第70回より)
こんなオカルティックな動機で政治家の支援活動を始めるというのも信じられないが、小川氏は早速“安倍氏を総理にするための戦略プラン”を作成。下村博文・元文科相を通じて安倍氏に渡したという。
そして、12年の自民党総裁選で小川氏は前述の「創誠天志塾」を使ってこんな働きをしたのだと語っている。
〈SNSによって安倍さんの声がより多くの人たちに拡散するお手伝いをしました。当初、安倍事務所はSNSの活用について懐疑的だったのです。SNSなどのインターネットメディアに嵌ると支持されているという幻想を生みかねないという事が理由でしたが、敢えて天志塾の若い塾生たちが、強くSNSの活用を勧めたのです。〉(同前)
ようするに小川氏は、ただ安倍首相を“応援”するだけでなく、総理に返り咲くためのプランを練ったり、復活をさせるために私塾を開いたり、挙げ句はSNSの活用という安倍首相がネトウヨを味方につけるというネット展開の進言者だったというのだ。実際、“ネトサポ”こと自民党ネットサポーターズクラブ(J-NSC)の活動が活発化したのは第二次安倍政権以降。安倍首相は小川氏のアドバイスや、彼が指揮する運動組織によって息を吹き返すことに成功したわけだ。
これでよくおわかりいただけただろう。「視聴者の会」の実態とは、極右思想家の集まりであるだけでなく、安倍首相と直接関係する人物が仕切る運動組織なのだ。彼らが“平等で正しい報道を”などといくら訴えても、何の説得力もない。
しかも、「視聴者の会」のキナ臭さはそれだけではない。そもそも大きな疑問なのは、会の「資金源」である。
今回、「視聴者の会」は、産経と読売新聞の2紙に意見広告を出しており、「賛同者の皆様からの寄付によって出稿しております」(広告紙面より)と説明している。だが、読売新聞全国版の全15段広告の正規価格は約4800万円。産経新聞は同じく約1300万円といわれている。あわせて6000万円以上。新規のクライアントは値下げ率も低いため最低でも4000万円以上はかかるだろう。