このように、衆院選をめぐって、創価学会には安倍首相や菅官房長官に“借り”が生まれただけでなく、谷川派は学会内部でも存在感を増した。また、佐藤氏の暗躍によって選挙に勝つことができた北側一雄副代表は、安保法制をめぐる与野党協議の公明側の代表である。
しかも、自民党は公明党に対して、“究極のカード”も握っている。それは、公明党と創価学会に対する“政教分離”問題というカードだ。今年6月、飯島勲内閣参与はワシントンで開かれた講演で、こう語った。
「公明党と創価学会の関係は長い間、『政教一致』と騒がれてきた。内閣法制局の発言の積み重ねで『政教分離』になっている。もし内閣が法制局の答弁を変えた場合、『政教一致』が出てきてもおかしくない。そういうことがない状態で着地点を見いだせば、きちんと収まる」
これは「創価学会の見解通りに公明党が動けば、政教一致と見なすぞ」「政教一致だとするのは簡単だ」と脅しているに等しい。じつはこの飯島氏の発言も佐藤氏の入れ知恵だという説もあるのだが、こうして公明党は自民党へ逆らうことができなくなっていったのだ。
党是に「平和」を掲げながらも、結局は党の存立と選挙に勝つことを優先し、戦争法案だと学会員から反発を受けても無視する──これが現在の公明党の姿だ。
すでに池田大作氏は健康面の悪化から意思表示できる状態ではないとも囁かれているが、公明党が学会員に支えられていることは紛れもない事実。信者たちの「戦争法案反対」の草の根運動は、今後の参院選を考えると、公明党にとっても自民党にとっても死活問題となっていくだろう。
(田部祥太)
最終更新:2017.03.02 05:34