『23』といえば、衆院の解散を発表した昨年11月18日に安倍首相が出演した際、VTRの街頭インタビューに「厳しい意見を意図的に選んでいる」と陰謀論まがいの主張を繰り広げ、出演2日後には在京テレビキー局に《選挙時期における報道の公平中立ならびに公正の確保についてのお願い》なる“自民党批判は許さない”という恫喝する通達を出している。安倍政権からすると、とくに『23』への恨みは深いようにも思えるが、自民党がシャットアウトしたのはこの番組だけではない。
本サイトでも既報の通り、先月6月28日に放送された『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)では、与野党の若手議員が集まって安保法制について議論を行う予定だったが、スタジオに現れたのは民主党をはじめとする野党の議員だけ。番組冒頭で司会の田原総一朗は「わりに自民党も最初はね、簡単に番組に出そうだった。出ると言っては断る、出ると言っては断る(ということがあった)」と語り、ついには番組プロデューサーまで出てきて、事前に30名以上の自民党議員に出演をオファーしたものの全員に断られてしまったこと、自民党広報部に取りまとめを求めるも、やはり「都合がつかない」と返答されたことを伝えた。
さらに、前述した毎日新聞によれば、日本テレビの『真相報道バンキシャ!』も、〈今月初め、自民党若手衆院議員への取材を依頼したが、実現しなかった〉という。理由は『23』や『朝生』と同様、党から議員へ圧力がかかったからだ。
加えて自民党は、現状の抗議行動の盛り上がりを考え、当面、街頭演説を行わない方針を打ち立てた。朝日新聞に掲載された党関係者のコメントによると、「批判される姿がメディアで映ると参院審議に影響が出る」ということらしい。
安保法制への国民の理解を促したいのであれば、自民党議員たちの意見を堂々と語ればいいだけの話。だが、安倍首相はそれを断じてさせない。というのも、右巻きの安倍チルドレンたちが例の問題となった勉強会「文化芸術懇話会」のときのように「本音」を語り、また国民からの批判に晒されることを、いまもっとも恐れているからだ。
周知のように、安倍首相はもともと「日本人に血を流させる」「日本人に命をかけさせる」ことを公言していたのに、今回の安保法制をめぐる説明では、国民を騙すために逆のことを言ってごまかしている。安倍チルドレンたちはそのころに安倍首相に吹き込まれた、首相の本音をそっくりそのまま口にしてしまう危険性があるので、それを口封じしたいのである。