最後まで付き合っていたのは、いわば“信者”だけだったといっていいだろう。モニター画面は安倍礼賛のコメントで埋めつくされ、そのたびに相方の女性議員が「いまの発言でよく理解できたとみなさんコメントしてくださってますね~」「たくさんの“8888”(パチパチ=拍手の意)いただいております〜、総裁!」などと気持ち悪いおべっかを使う。
安倍本人は、さぞや気持ちがよかったのではないか。しかし、「国民に理解を求めるため」と言いながら“ホーム”で支持者を前にいくら説明しても意味がないのは明らかだ。説得しなければならないのは、その“外”にいる人たちだろう。つまり、この番組は国民の理解を深めることには何の貢献もしていないのだ。この辺り、活字媒体としての説明の場にゴリゴリの右派雑誌「WiLL」(ワック)を選んだこととソックリだ。
「Cafe Sta」を使うことについて、安倍は6日の自民党役員会で「(説明のため)テレビ番組に出たいが、どこも呼んでくれない」とぼやいていたと伝えられている。だが、厳しい質問をする人間が誰もいない空間で、安倍の奇天烈な自説を垂れ流す放送局はさすがにないだろう。安倍はその一方で、田原総一朗氏が司会を務める『朝まで生テレビ!』への自民党議員の出演を禁止したり、つい最近も元外務副大臣の岩屋毅議員がBS日テレの番組に出るのを止めたと報じられた。安倍自身も、日本外国特派員協会からの再三の会見要請から逃げまくっている。“アウェイ”での勝負を徹底して嫌う安倍の小心さと、法案に対する自信のなさの表れだろう。
肝心な「Cafe Sta」での“説明”は壊れたテープレコーダー、もしくは頓珍漢を極めた理屈のオンパレードだ。たとえば、第1夜で新たに出てきた“珍説”が「新安保法制=戸締り論」だ。番組で安倍は、
「備えあれば憂いなしというのは、一般の家庭でも戸締りをしっかりしていれば泥棒や強盗が入らない。また、その地域や町内会でお互いに協力しあって、隣の家に泥棒が入ったのがわかったらすぐに警察に通報する。そういう助け合いがちゃんとできている町内は犯罪が少ない。これが抑止力なんですね」
などと、滔々と語った。だが、安倍はこの話を持ち出すほんの数分前に、同じ町内会の“隣国”である北朝鮮を引き合いに出し、やれ拉致だテポドンだと散々脅威を煽っていたのだ。安倍はこうした矛盾や論理破綻がまったく気にならないようだ。中国はもとより、韓国とさえ「お互いに協力」し合うことができない関係になっているのは、いったい誰のせいなのか。