一方、橋下は参院選には出馬しないが、事実上は代表として「松井維新」を支えていく。政策立案にもかかわり、すべての候補の応援演説を受け、メディアでどんどんPRしていく。つまり、「政界引退は嘘だった」という批判を受けずに政治にかかわり、逆に自由な立場を利用して、自分たちの勢力を拡大させていくという作戦だ。
「そして、参院選後に維新は与党に合流。自公、維新で参院でも3分の2を確保して憲法改正の発議をめざすというシナリオです。たぶん、そのへんのことまで話していると思いますよ」(前出・政治評論家)
実際、この会談の少し前から、維新は明らかな変化を見せている。派遣法改正案をめぐる審議でも維新は突如、審議拒否から一転して採決に応じる方針を表明し、この最悪の改正をアシストする方向に踏み出した。
また、橋下も住民投票以降、中断していたツイッターを再開。安保法制について露骨に安倍政権を擁護する発言をツイートし始めた。
たとえば、憲法学者の違憲発言の少し後には〈(憲法学者は)日本国における有権解釈者ではない〉〈内閣における憲法の有権解釈者は内閣総理大臣。憲法解釈が時代とともに変遷するのは当然のこと〉とツイート。さらに、安倍首相と同様、砂川事件を持ち出し、〈民主党議員や憲法学者は砂川事件判決は集団的自衛権を認めていない!と主張するが論理がおかしい。国連憲章上、集団的自衛権は国家固有の権利。そして砂川事件判決は日本国の自衛権を認めている〉と批判した。
また、集団的自衛権についてもこう安倍首相にエールを送っている。
〈集団的自衛権という言葉はともかく、閣議決定に示された自衛権は必要。これまでを否定するなら、それこそ憲法9条を改正してアメリカに頼らない完全な自主独立防衛力が必要〉
〈もし日本が単独で自主独立防衛をするならもっとリスクが高まる。もちろんコストも。これまでは吉田ドクトリンで異常なまでの軽武装だったのだ。少しまともになるだけ〉
そして、会談後は「維新の党は民主党とは一線を画すべき」と発言して、現執行部に対して、明らかに安倍政権=自民党にシフトするよう圧力をかけた。
「一説には、安倍さんが橋下市長に『私が種をまくからあなたの手で9条改憲をしてほしい』とまで言った、なんて情報までありますからね。橋下市長も本気で安倍さんと組む気になったということじゃないでしょうか」(前出・政治評論家)
もっとも、橋下市長が政界引退発言の舌の根も乾かぬうちに安倍政権にすり寄り、国政にコミットし始めたのは、もうひとつ理由があるともいわれている。