思い起こせば、例のAKB握手会襲撃事件が起こった際、総合プロデューサーであるにもかかわらず事件について発言を行わなかった秋元氏。事件について触れたのは約1カ月半というスピードで握手会を再開させると運営側が公表する直前のことだったが、そのとき、秋元氏はこう綴った。
〈「夢をあきらめるわけにはいかない」。その信念から傷ついた彼女たちは立ち上がり、前に進んだ〉
事件が発生してしまったことの運営側の不備や説明責任などは完全に無視。“握手会=彼女たちの夢、信念”と勝手に論理のすり替えを行い、握手会再開を見事に正当化したのだ。この厚顔無恥っぷりには呆れ果ててしまうが、これとよく似た手口をわたしたちはよく知っているはずである。そう、これって安倍首相の言う「積極的平和主義」とそっくりなのだ。
ほんとうのところの話をすると物騒だから、“平和”だの“夢”だのというキレイで前向きなワードでごまかしてしまおう。……仲良しの安倍首相と秋元氏だが、やり口まで一緒だとは。でも、そう考えると今回のシングル「僕たちは戦わない」は、秋元流に「積極的平和主義」を歌詞にしているような気がしてくる。事実、安倍首相は、武力行使ができるように変更しようとしているくせに、むやみやたらと「武力の行使は決して行わない」「米国の戦争に巻き込まれることは絶対にない」と強調。戦える準備をしているのに、なぜか“僕たちは戦わない”と逆の話を主張しているからだ。ちなみに、「僕たちは戦わない」のPVでも「戦わない」と歌いつつ、黒づくめの敵っぽい人たちをメンバーが血を流しながらガンガン叩きつぶすというアクションシーンを織り込んでいる。おいおい、戦わないんじゃないのかよ!
まあ、とはいえ実際のところ秋元センセイは「総選挙でメンバーを競わせるのに、あえて“戦わない”と歌わせるって面白いだろ?」くらいにしか考えてない可能性も高い。でも、もしほんとうに歌詞に描いたように「戦わない」ことの重要性を訴えたいのなら、安倍首相に推薦文でも頂戴してみたらいいのに、と思う。“反戦歌”の感想を、このタイミングで安倍首相にぶつける……こんなにプロモーションになる話もないでしょうよ、秋元センセイ。
(大方 草)
最終更新:2015.05.18 12:43