ところが、10月29日、次男はなぜか起訴されることなく起訴猶予という処分が下されていたのだ。
いったい何があったのか。実は、次男が盗んだとされる“カバン”と“財布”から次男の指紋は検出されなかったのだという。そして、ATMを調べても“残高照会”を試みようとした記録しか残されていなかった。“引き出し”をしようとした痕跡がなかったのだ。
これらの事実は、当初から次男が主張していた「落ちていたカードを自分が盗まれたカードだと勘違いし残高照会した」という証言に合致する。また次男はカバンが落ちていたことや、その持ち主が植え込みの中で寝込んでいたこともまったく知らなかったという。
これらの事実を聞くと、次男の逮捕は明らかに誤認逮捕、冤罪としか思えないだろう。しかしだとしたら、どうしてみのの次男、そしてみのはそのときに声をあげなかったのか。考えられるのは、おとなしく罪を認めれば、釈放と起訴猶予処分にするということで警察と話がついていたという可能性だ。
当初、警察はみのの次男ということで、なんとしても事件化しようと、前のめりになって捜査を開始。マスコミにもどんどん情報をリークした。ところが、途中で、盗んだとされる“カバン”と“財布”から次男の指紋が検出されなかったことが判明。慌てて幕引きをはかった。
実際、みのは同書の中で、警察の前のめりな姿勢についてこう疑問を述べている。
「キャッシュカードとカバンの窃盗容疑をわざわざ分けて逮捕するというのはあきらかに異例でした(略)何がなんでも警察は次男を起訴に追い込む腹づもりでいることが明白になりました」
加えてその体制も異例だったという。捜査にあたったのが所轄ではなく警視庁捜査第3課という“プロの泥棒”を扱う専門部署だったからだ。
「単に“置き引き”の疑いがあるというレベルの事件を担当する捜査員たちではありません。そもそも、どうしてそんなスペシャリストたちが出動してきているのか?」
みのは元検察官で警察内部の事情に詳しい弁護士からこんなことを言われたとも付け加えている。
「原因は君だよ。この件は君が“みのもんた”じゃなかったら、1日でおしまい。逮捕までいかなかったんだよ」
「人の不幸は密の味と言う言葉もある」
しかし、みのはそれでも結局、同書の中で冤罪とは一言もいっていない。 不当逮捕という表現も使っていない。その背景にはおそらく、みのの次男が警察との取引に応じてしまったということがあるのだろう。次男の側にも他人のキャッシュカードを残高照会とはいえ一旦使用し、そのまま捨ててしまった負い目があり、そのため、「罪を認めれば起訴猶予にする」という取引に応じてしまった。その次男を慮って、一番核心の部分を話していないのではないか。
だが、もし、みのが本当にキャスターとして報道番組復帰したいと思っているなら、この部分を包み隠さず話し、そして不当逮捕した警察と当時、洪水のような報道を繰り広げたマスコミと対峙すべきだろう。そのことが、みのにとってのみそぎであり、甘やかしてきた次男に対する親の責任の取り方というものではないだろうか。
(伊勢崎馨)
最終更新:2017.12.09 04:45